事例紹介

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週末は仲間と竹炭づくりに熱中!放置竹林竹炭プロジェクト

環境
週末は仲間と竹炭づくりに熱中!放置竹林竹炭プロジェクト
活動団体 静岡放置竹林竹炭プロジェクト
活動場所 静岡県静岡市

『竹害』という言葉を知っていますか?

竹は、日本各地に広く分布し、我々の暮らしの中で、昔から様々なものに利用されてきました。

常緑で倒れにくく、生命力豊かで、まっすぐに伸びる竹は、古くから縁起の良い植物とされてきました。
静岡県内にも多く見られ、馴染みのある存在ですが、そんな竹が、里山の環境に悪影響を及ぼしていると言います。

静岡市を中心に、放置竹林の改善に取り組んでいる知久昌樹さんを取材しました。

目次
1)昔に比べて景色が変わった。放置竹林の弊害とは
2)これまでの人脈を活かして、竹害の出口を模索
3)サステナブルな社会へ、若い世代の関わりを
4)汗をかいて地域の為に出来ること

昔に比べて景色が変わった。放置竹林の弊害とは

昔に比べて景色が変わった。放置竹林の弊害とは

「雑木林だった場所に、いつの間にか竹が増殖している。」
そう聞いても、「木が竹に替わっただけなら、コンクリートや人工物になるのと違って環境に問題ないのでは?」と、浅知恵で考えてしまったのですが、話はもっと深刻でした。

繁殖力が非常に強く、成長も早い竹は、管理されずに放置されると、周囲に地下茎を伸ばし、あっという間に山林を侵食していきます。これが『竹害』。

深く根を張る樹木に比べて、表層にしか根を張らない竹林が山間部に広がると、大雨によって土壌が緩んだ際に、竹林ごと斜面を滑り落ちる危険性が高まります。
その結果、最も懸念されるのが、大規模な土砂災害だと言うのです。

これまでの人脈を活かして、竹害の出口を模索

これまでの人脈を活かして、竹害の出口を模索

放置竹林の駆逐・伐採を行う活動を始めた経緯について伺うと、地域の社会問題でもある放置竹林に対して問題意識を感じていたタイミングで、運命的なめぐり合わせがあったそうです。

それが地元に窯を持ち、伝統の技で竹炭づくりを行う金丸正江さんとの出会い。

竹林の手入れをするだけでは、一過性のアクションになってしまい、持続性に欠けると考えていた知久さんは、
竹炭づくりによって竹材を『竹財』へと変える糸口を見いだします。
金丸さんに教えを請いながら、放置竹林の竹を焼いて、竹炭の商品化に取り組みはじめました。

長年新聞社に勤務した知久さんの人脈が活かされ、週末を利用した伐採や竹炭づくりに、徐々に協力者が集まります。
たけのこ堀りを行い、調理して味わうなど、週末のイベントとして楽しみながら活動されているのだとか。

竹炭づくり以外にも、竹灯り工芸やメンマづくりなど、他団体の取組みも参考にしながら、相互に乗り入れるカタチでイベント協力し合うこともあるようです。

県内の酒蔵で、仕込み水のろ過に竹が活用される事例が生まれたり、県外から知人が視察に来たことも。
補助金などに頼らず自走できる仕組みづくりに、試行錯誤が続きます。

サステナブルな社会へ、若い世代の関わりを

サステナブルな社会へ、若い世代の関わりを

取材当日には、地元静岡大学の学生も同席し、知久さんと活発な意見交換が行われました。

知久さんからは、大学で竹材の研究や商品開発が進むことへ期待が寄せられ、学生からは、サステナブル(持続可能な)社会の実現に向けて、地域と学生が協力するアイデアが持ち上がります。

この日参加した学生は、県外から大学進学を機に静岡県に住むようになったそうです。放置竹林は、静岡県内だけの問題ではないと、熱心に話を聞いている姿が印象的でした。

実際に竹林に足を踏み入れて作業をすると、1本の竹を持ち出すだけでひと苦労。竹が水を吸う時期は、特に重くなるのだとか。
「静岡県内に多く見られる急斜面での竹林伐採には、若いマンパワーをぜひ貸してほしい」と、熱望します。

汗をかいて地域の為に出来ること

汗をかいて地域の為に出来ること

現在64歳になる知久さん。メディアの仕事を続ける中で、歳を重ねるにつれて社会問題への関心や、貢献したいという想いが大きくなっていったと言います。

「やれる範囲で」と言いながらも、「放置竹林の解決が、地域活性に繋がって行けば」と、大きなビジョンを掲げます。

今後の展望を聞くと、「放置竹林が減って、野山にしっかりと樹木が育つ景観を取り戻せたら、季節ごとの花見や散策など観光に繋げていきたい」そうです。

「今の活動が後世にどう評価されるのかは分かりませんが。」そう前置きした後、「竹林に人の手が入ることで喜んでくれる人の声に背中を押されるように活動を続けています。」そう笑顔で話してくれました。
誰かが共感してくれることや、一緒に活動してくれる仲間が増えることも原動力なのだとか。

「汗をかいて、自分の出来ることを、ひとつずつ。」
知久さんのお話しを聞いて、近所で目にする竹林が、また違った見え方になりそうです。

静岡放置竹林竹炭プロジェクト
https://shizuoka-yellstation.com/group/d075

(文・写真)静岡県関係人口ライター