事例紹介

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美しい自然を未来へ繋ぐ! 久々生(くびしょう)海岸 “里海”プロジェクト

環境
美しい自然を未来へ繋ぐ! 久々生(くびしょう)海岸 “里海”プロジェクト
活動団体 NPO法人Earth Communication
活動場所 静岡県御前崎市

海のまち御前崎市の太平洋に面した外海ではサーフィンなどのマリンスポーツが盛んに行われ、駿河湾に面した内海は海水浴場や国際コンテナターミナルもある“みなとオアシス”として認定されています。
そんな御前崎で子どもたちへの自然体験活動やビーチクリーンなどを通して、まちの未来を育もうと活動しているのがNPO法人Earth Communicationの川口眞矢さん36歳。
NPO法人Earth Communicationでは海・川・里山での自然体験活動から子どもたちに自然を身近に感じてもらい、さらに海や山の環境について知ってもらえるよう“きっかけづくり”を行っています。

「子どもの頃から御前崎の海や自然が大好きでヨットやカヌー体験をして遊んでいた」と話す川口さん。幼少期はとくに2人の祖父とたくさん遊びながら、自然との向き合い方を学んだそうです。父方の祖父は漁師、母方の祖父は大工をしていたこともあり、釣りや魚の捌き方、山の歩き方など様々な知識を体験しながら習得。「楽しいことなら忘れず体が覚えている!この原体験があったからこそ今の自分はある」と語る川口さん。
子どもの頃から遊びを教える先生になりたい!と思った川口さんですが、「これからの時代にそういう先生はいらないよ!」と大学の面接で言われたことを機に進路を変えることを決心。その後、海洋生物や自然環境について学ぶ専門学校に進学し、卒業後はインドネシアやオーストラリアへ旅に出て海洋生物などの学びを深めました。
日本に帰国してからは磐田や富士宮の児童福祉施設で働かれ、子どもたちが自然の中で体を動かす療育についても職場を通して学ばれています。

2016年、海と山、両方の自然活動を行える御前崎へ戻ろう!と思い、約15年ぶりに帰郷。そこから自然活動家としての仕事をスタートし、2019年にはNPO法人Earth Communicationとして活動を開始。今では年間延べ1000人以上の子どもたちと関わり、自然体験活動や環境学習などに取り組んでいます。
なかでも環境保全活動として力を入れている取組が久々生(くびしょう)海岸に自生・群生し始めた海草の一種“コアマモ”を守るプロジェクトです。きっかけは川口さんが2017年に業務の一環で、水上バイクで何度も海岸を走っていた際、あるはずのない準絶滅危惧種のコアマモを偶然発見したこと。その後、コアマモがいる海の中には多くの稚魚や幼魚などが生息していることが分かりました。「久々生海岸はもともと岩場の多い海岸だったが、港の造成の影響で海流が変わり、砂や泥が流れ着くようになったと思う」と話す川口さん。その結果、長い年月をかけて砂や泥が堆積し、そこにコアマモが自生することになったと考えられています。

写真提供:NPO法人Earth Communication

しかしコアマモが生息すると同時に、海洋ゴミが漂着し、ゴミが溜まりやすい海岸へと変化していました。昨年は年間で50回のビーチクリーンを実施し、ビニールやプラスチックなど海洋漂着ゴミを約24,000リットル回収。コアマモが自生しているという貴重な変化がある一方で、海が抱える課題を目の当たりにする変化も起きているのが、現在の久々生海岸です。だからこそ、“里海”として保全していく仕組みを作り、海洋環境教育の場として活かしながら少しでも多くの方に海の現状を知ってもらう『きっかけづくりの場』にしていきたい!という想いで川口さんたちは日々活動に励んでいます。

写真提供:NPO法人Earth Communication

そして自然とつながる事業の一つ、御前崎市とともに行っているのが体験活動プログラム『御前崎クエスト』です。キャンプや海釣り、竹林整備など年12回の体験活動を通して、子どもたちが学ぶ場を作っています。また高校生から社会人までを対象に今度は学んだことを人に伝える「リーダープログラム」を実施。さらに低学年や未就学児が親子で一緒に参加できる「親子プログラム」も人気を集めています。最近、開催された小中学生対象の草木染めプログラムでは自宅でも手軽にできるよう玉ねぎの皮や笹の葉を使い、身近なものから作る染物の色の変化を楽しんでいました。実は御前崎市の池新田地区には“ドンブチ”と呼ばれる井戸があり、そこにたまった水をかんがい用水や染物の井戸としても利用していたそうです。こういった歴史文化を伝えていくことも未来に引き継ぎたい“里山”として、大切な自然環境保全の取り組みです。

海藻から貯蔵できる炭素、いわゆるブルーカーボンや光合成によって植物の土の中に蓄積される炭素のグリーンカーボンを上手く活用し、低炭素社会に向けた取り組みがこれから先の未来への環境づくりになると実感しました。
取り巻く環境が一変した今だからこそ、川口さんたちはこれまでにない“自然体験活動の新しい可能性”を発掘し、『300年先の未来をみすえて、今できることをひとつずつ』をモットーに持続可能な環境と社会づくりを目指しています。みなさんもNPO法人Earth Communicationの活動に参加して、川口さんと一緒に自然を楽しみ、より自然を身近に感じてみてはいかがですか?

◇マリコの取材こぼれ話
・久々生海岸では貝を探すべし!(ハイガイなど貴重な化石を発見できるかも♪)

 

 

 

(文・写真)静岡県関係人口ライター