事例紹介
掛川市・西郷地区発。20代の若手理事長が牽引する『わくつなプロジェクト』
まちづくり活動団体 | NPO法人 WAKUWAKU西郷 |
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活動場所 | 静岡県掛川市 |
防災や環境問題に取り組む地域団体へのインタビューに向かった先は、掛川市西郷地区。
NPO法人『WAKUWAKU西郷』を訪ねると、松浦莉子さんがドアを開けてくれました。
チャーミングな笑顔で差し出された、丸い文字の可愛らしい名刺。
そこに印刷された『理事長・松浦莉子』という貫禄のある肩書きに驚いて、NPO法人の理事長を大学卒業後すぐに務めることになった経緯から、お話を聞かせて頂きました。
きっかけは、東日本大震災の現地ボランティア
『WAKUWAKU西郷』は、掛川市西郷地域を盛り上げたいという想いから、松浦莉子さんのお父さんが立ち上げた事業です。
環境、防災に対する意識改革や生活改善を図り、協働のまちづくりを推進する事を目的に、地域の古紙回収活動をスタートさせたのは、莉子さんがまだ小学生の時でした。
「お父さんの日曜大工を手伝うような感覚で、古紙回収の手伝いを自然と始めていました。」
家庭や企業から出る古新聞、古雑誌、ダンボールを回収しながら地球温暖化防止を呼び掛け、地域の環境意識を高める活動も、小学生の莉子さんにとっては休日のアクティビティ。お父さんと一緒に、日常の一部として地域活動に関わり始めたと言います。
そんな中、自らボランティア活動を意識するようになったのは、東日本大震災がきっかけでした。
高校生ながら、東日本大震災後のボランティアとして現地へと向かった莉子さん。
被災地での体験がターニングポイントとなり、その後大学でも、ボランティアサークルに入ったそうです。
そして、幼少期から変わらない地元への愛着と、これまでのボランティア経験を地域にも還元すべく、
NPO法人WAKUWAKU西郷の『理事長』のバトンを引き継ぐことを決めました。
若い世代が、地域に活力を『わくつなプロジェクト』
WAKUWAKU西郷の理事の中では最年少。
他の理事とはずいぶん歳の差がありますが、小さいころから可愛がってくれる近所のおじさん・おばさん達なので、莉子さんのやりたいことを、後押ししてくれる頼もしい存在のようです。
理事長に就任して手掛けた『わくつなプロジェクト』は、ニュースにも取り上げられ、話題になりました。
安心して暮らせるまちづくり『防災』をテーマに、女性目線での防災や、子育て世代の防災などの企画を実施してきましたが、その特徴は、楽しく学べて、行動できる体験型イベントであることです。
SNS活用など、若い世代ならではの提案も盛り込まれ、東京に住む学生が実行委員に加わったり、1回目の参加者が2回目には実行委員側になって参加したりと、地域の枠に留まらない活動が注目されています。
ワークショップの参加者からは、「防災は男性的なイメージがあったが、女性の視点が欠かせないと実感した」といった声や、「さっそく、会社に提案して防災対策に取り組みたい」と、学びや発見に繋がる感想が多く寄せられたそうです。
引継ぐこと。続けていくこと。
「年齢が若いことで、デザインやSNS発信が得意だと思われるのですが、実はそんなにマメじゃないんですよ。」
それでも他にやる人がいないから、ひとつずつチャレンジしているそうです。
莉子さんの話を聞きながら、年齢や性別で、得意なことや役割を勝手に判断してしまう場面があるなぁと反省しました。
『わくつなプロジェクト』で新しい企画を立ち上げる以外に、これまで行ってきた古紙回収やボランティア活動も変わらず行っています。
子どもからお年寄りまで、皆で集める古紙回収は、その売却益で地元の小学校に太陽光発電機を寄贈する成果を成し遂げ、常設倉庫や協力店舗でも回収を行える仕組みが地域で構築されました。
また、震災から10年以上が経つ今も、陸前高田市を毎年訪ねてボランティア活動を継続しています。
被災地での活動と学びを、地元に持ち帰ることで、地域防災に役立てる莉子さんの姿勢は高校時代から変わりません。
わくわくする、つながりを、カケガワから
「自分が住む街の課題を見つけているのは住人自身。行政だけではなく、皆で街づくりをしたいです。」
実家が農家なので、野菜や果物の交換がある『近所づきあい』がその原体験とのこと。
新興住宅や小学校増設で、新たな人が地域へ加わる際も、自然に顔の見える繋がりを生み出せないか模索しています。
地域住民、企業、行政がそれぞれ力を出しあって、協働のまちづくりを推進していくために、地域内にこだわらず、活動を共に盛り上げる仲間も募集しています。
イベント運営、クリーン活動、災害支援、スポーツや子育てなど、活動は多岐にわたりますが、「興味のあるテーマだけでも構わないので、自分スタイルで、気軽にチャレンジして欲しい」とのこと。
「自分が歳をとった時にも、あたたかな町で在り続けて欲しいので。」
ぽつりと、そう語る莉子さん。
これから地域と共に、『わくつなプロジェクト』がどう発展していくのか、楽しみです。