- 活動団体
- 合同会社うさぎ企画
- 活動場所
- 三島市
静岡県三島市。東京から新幹線で約45分、富士山を望むこの街で、地域と人を繋ぐユニークな取り組みが注目を集めています。合同会社うさぎ企画代表の森田さん。東急電鉄で23年間勤務した後、三島に移住し起業しました。「数ではなく、本気でコミットできる50人を連れてこれれば、地域は勝てる」。そう語る森田さんに、関係人口を活かした地域活性化の取り組みを伺いました。
コロナ禍が気づかせた、本当の街づくり

森田さんが三島に移住したのは2021年。当時、東急電鉄で伊豆半島初の観光型MaaSプロジェクトの責任者を務めていました。都内と伊豆を行き来する中で、コロナ禍による劇的な変化を目の当たりにします。
「観光客が20分の1に減った一方で、リモートワーカーが10倍に増えました。その時に気づいたんです。これからの街づくりは数じゃない。2万人、3万人の観光客より、50人の本気でコミットできる人たちのほうが、地域の力になる」

会社員時代は「量」を求められていた森田さん。しかし地方ならではのポテンシャルに触れるうち、来訪者の数ではなく「質」こそが過疎地が生き残る鍵だと確信しました。それを試すには独立するしかない。そう決意したと森田さんは語ります。
2021年10月、合同会社うさぎ企画を設立。社名の由来を尋ねると、少し照れくさそうに語ってくれました。「実は妻がうさぎ好きで。うさぎは耳が長いので、時代の変化の足音を聞く、という意味を込めました」
「三島の人事部」が生み出す、新しい雇用のかたち

現在、森田さんのライフワークとなっているのが、2025年10月、三島広小路駅すぐそばに開設した「三島の人事部」。使われていなかった三島信用金庫の西支店2階をそのまま活かした、移住・二地域居住・副業人材マッチングの総合窓口です。

副業機会の紹介や地元経営者から課題相談、移住や二地域居住の相談はもちろん、「配偶者の就職先を探してほしい」「地域コミュニティを紹介してほしい」といった家族ぐるみの相談にも対応。
実際、ご夫婦で訪れて、奥さまが隣町の箱根で就職が決まったケースもあります。三島信用金庫と連携し、県境を越えて箱根の人材不足も支援するなど、行政区域に囚われない柔軟さが特徴です。

窓口には「ギブ&テイクボード」という仕組みがあります。「私はこんなスキルを提供できます」というギブの名刺と、「こんな人材を探しています」というテイクの名刺が掲示されており、見るだけでマッチングが成立することも。開設から2ヶ月で60人以上が訪れ、口コミで広がっていると言います。
枠を決めず、繋いでいく

森田さんが大切にしているのは、「枠を決めないこと」。
「自分が考えているより世の中は広い。別々に見えるものも、実は繋がっている。いろんなものをつなぐことで相乗効果が生まれ、世の中が少しずつ変わっていく」
モビリティ事業、人材交流、二地域居住。一見バラバラな事業も、すべて「乗り物と人の交流によって地域を元気にする」という軸で繋がっています。
「乗り物に乗って行きたくなる目的を作る。移動手段と移動目的を同時に作る。これは会社員時代には気づけなかったことです」
昨年からは芸備線(広島)でのローカル線活性化事業にも挑戦中。
「4歳の長男とプラレールで遊ぶうちに、親父の背中を残せるとしたら、自分を今まで育ててくれたインフラである鉄道を、未来のある形で残すことだと思ったんです」
そう語る森田さんの顔は穏やかでした。
「去年から変な力が抜けました。もっと自分が見たい景色や試したいことを大胆にやればいい。そう思ってからのほうが楽しくやれています」
地域ごとの勝ち方をデザインする

今後の展望を尋ねると、森田さんは静岡への深い愛着を語ってくれました。
「東京にも通えて、自然豊かで住みやすい。とくに私が移住した長泉町は70%が山で、先日は子どもたちと柿狩りに行きました。東京から1時間かからないところに大自然があって、ワークライフバランスには最高の場所です」
一方で、地元の人ほど魅力に気づいていないことを懸念しています。
「外から来た人だけでなく、地元の人にも、よそ者だからこそ紹介できる魅力を伝えたい。地元の人が地元の良さを堂々と誇れることが大事。それが結果的に、二地域居住や移住者を増やすことに繋がると思っています」
森田さんのビジョンは三島だけにとどまりません。
「それぞれの街ごとに勝ち方が違う。例えば三島と焼津が違うように地域ごとの勝ち筋、生かし方をデザインする。地元の人が腑に落ちて、無理せず自然体で続けられる活性化をデザインしたい。それが自分なりの地域への恩返しです」
あなたも「三島の人事部」で新しい繋がりを

三島広小路駅から徒歩圏内の「三島の人事部」。月曜から金曜、10時から16時半まで開いています。ご自分のスキルを地域のために活かしたい方は、ぜひお気軽にお越しください。企業で課題を抱えている経営者の方もお待ちしています。ご相談はすべて無料です。
「来訪者は数より質。本気でコミットできる50人がいれば、地域は変わるはず」。
そう信じて、森田さんは今日も窓口に立っています。あなたも三島の、静岡の、新しい関係人口の一人になりませんか。
取材・文/大西マリコ

