事例紹介

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地域活動で街の未来を創る。6人の高校生が「暮らしやすい明日を地球規模で考える」(有志団体US)

まちづくり
地域活動で街の未来を創る。6人の高校生が「暮らしやすい明日を地球規模で考える」(有志団体US)
活動団体 US
活動場所 静岡県静岡市

近ごろよく聞く「SDGs」という言葉に馴染みはありますか?
2015年の国連総会で採択された「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」のことです。17の開発目標の中に、達成基準や指標が定められています。近年では、「自社の事業や取り組みに絡めたSDGs施策」を掲げる企業も増えてきました。

しかし、果たしてこれらの開発目標は、国や企業だけが達成できていればよいのでしょうか?

静岡市で活動する「US(アス)」は、駿河総合高等学校に通う6名の高校生から成る有志団体です。地元を中心にボランティアや地域貢献活動に励んでいます。

彼らの活動の根底にあるのは、SDGsの考え方です。今回は同団体の活動について、久保田 海央さん(同校3年/写真左)、永井洸我さん(同校3年/写真右)にお話を伺いました。

 

ボランティア活動で地域貢献を実現する有志団体

USに所属しているのは、駿河総合高等学校の学生たち。旗振り役は理事を務める久保田さんです。所属している報道部がきっかけとなりました。

久保田さん「顧問の先生から、『かつての教え子が、地元で防災に関する活動をしている。活動の内容や視点は、報道部でも役立てられるかもしれない。紹介しようか?』と言われました」

久保田さんは、この出会いを機に地域の防災活動に参加。徐々にやりがいを感じ始めたといいます。

 

ボランティア活動で地域貢献を実現する有志団体

久保田さん「はじめから防災やボランティア活動に特別な思い入れがあったわけではありません。ただ、複数回参加するうちに、『楽しいな』『地域に貢献できているな』という実感がありました」

同団体の活動には、同校の生徒が6名参加。同じ思いを持つ彼らが主体となり、2022年3月にボランティア活動で地域貢献を実現する有志団体・USを立ち上げました。

 

SDGsを軸に「私たちが暮らしやすい明日を地球規模で考える」

USの主な活動は、ボランティア活動の企画や運営。有志団体で部活動ではないため、顧問の先生はいません。学生たちが自らの意志のもと、話し合い、方向性を定め、活動しています。

このシンプルな団体名には、3つの意味が込められているといいます。

久保田さん「1つ目は、『私たち』を意味するUS。2つ目は『あした』という意味の明日。3つ目は、地球の英語表記『Earth』」

命名の背景には、「私たちが暮らしやすい明日を地球規模で考える」という、活動指針がありました。

久保田さん「僕たちの活動は、SDGsの考え方に基づいています。USのボランティアや地域活動を通して、地元・静岡を活性化させたい。活動を続け、その様子を発信していくことで、やがて僕らの思いが日本中、世界中に広がり、その結果として地球に貢献できたらいいなと思うんです」

 

SDGsを軸に「私たちが暮らしやすい明日を地球規模で考える」
永井さんはサッカー部との活動を両立。「地域住民や環境のために何かできることがあるのでは」という思いからUSに加わりました。

認知症カフェの取り組み

ここでUSの具体的な活動内容についてご紹介します。まずは「認知症カフェ」の取り組み。認知症カフェとは、認知症の当事者やその家族、一般客などに向けたカフェのことです。認知症患者へ居場所を提供できるほか、健常者が病に対する理解を深める機会にもなります。1997年にオランダのアルツハイマー協会を中心にスタートし、その後世界中に広まりました。

 

認知症カフェの取り組み
認知症カフェ 開催時の様子

US主催の認知症カフェ「駿総カフェ」では、参加者に「フェアトレード(※)のチョコレート」を提供しました。

久保田さん「僕らがフェアトレードチョコレートを提供した理由は、『チョコレート生産国の児童労働をなくすこと』が目的です。認知症カフェでは、児童労働の現状やチョコレートができるまでの過程など、その背景も含めて紹介しました」

参加した地域の方からも好評で、過去1年間で3回実施しています。

※フェアトレード・・・「公正取引」の意味。現在は、発展途上国で生産された原料や製品を適正価格で購入することで、途上国の生産者、労働者に正当な価値を還元し、生活の改善と自立を促す言葉としても知られている。

 

大人を巻き込み、活動の幅を広げる

USでは、認知症カフェや防災フォーラムなど、精力的にボランティア活動を行っています。久保田さん曰く「活動を続ける上で大切にしていることは、『大人の視点を取り入れること』だ」と言います。

 

大人を巻き込み、活動の幅を広げる

久保田さん「取り組みの中には高校生の僕らだけでできるものもあります。でも、あえて身内で完結させていません。第三者の大人の意見を取り入れたり、協力していただいたりすることで、活動の幅と内容に広がりが生まれると考えています。特に地域活動は、地域住民が居て初めて成立します。色々な方の意見を反映させながら行う方が、結果として地域の皆さんに喜んでいただける」

レモネードの売上を小児がん支援につなげる「レモネードスタンド活動」はその良い例です。
今年4月、USと浜松南高校家庭部、うなぎパイで知られる菓子店「春華堂」がコラボし、「ピンクレモネード SAKURA Flutter」を共同開発。浜松市にある「SWEETS BANK」で期間限定販売しました。

 

ピンクレモネード SAKURA Flutter

プロジェクトに企業や他校を巻き込むことで、企画そのものに広がりが生まれ、その根底にある思いを多くの地域住民に届けられます。このことから、久保田さんと永井さんは「地域で活動をする上で、つながりが大切だ」と言います。

永井さん「コミュニケーション無くして、関係性ができることはありません。会話や体験を通してつながりが生まれることは、活動のためになるだけじゃなく、僕ら自身も楽しいんです」

 

続けること、つながりをふやすことが大切

続けること、つながりをふやすことが大切

2023年8月、USは「高校生VOLUNTEER AWARD2023」に出場。135団体が出場する中、USはブース発表団体に選出され、都内の会場で活動の成果発表を行いました。
この経験から、久保田さんは「全国に同じマインドを持つ高校生がたくさんいることを知り、新たなつながりができた」と言います。

久保田さん「他校の発表を聞き、“ボランティア”と一言で言っても、色々な活動があるのだと知りました。他地域の取り組みの中で活かせるものは地元でも活かしたい」

現在は大会で知り合った県外の高校生とSNSでつながり、今後のプロジェクトについて相談している最中だそう。

 

今後の活動に期待を寄せる二人ですが、USのメンバーは高校3年生。進路によっては、地元を離れる選択をするメンバーもいます。しかし、久保田さんは「かたちは変わっても、続けることが大切」と語ります。

久保田さん「県外の方とも積極的に関わり合いながら、活動を続けていきたいですね。これまではUSのプロジェクトに関わってくれた企業の方など、周囲の方につながりを作ってもらうことの方が多かったんです。でもこれからは1年間で積み上げたノウハウをもとに、僕らがつながりを作る役目を担いたい。卒業後、県外に出るメンバーもおり、活動スタイルは変化するかもしれませんが、どのようなかたちであれ続けていくことが第一だと思っています」

持続可能な未来は、将来を担う若者や子供たちのためのものでもあります。USはまさにその当事者が主体の、持続可能な未来を創る団体です。
皆さんも彼らの活動を通して、“持続可能な明日へつながるワンアクション”を起こしてみてはいかがでしょうか?

 

 

(文・写真)静岡県関係人口ライター