- 活動団体
- 株式会社シタテ
- 活動場所
- 三島市
静岡県三島市。首都圏からのアクセスの良さもあり、多くの人が行き交うこのまちは、観光地としてだけでなく、暮らしの場としても注目を集めています。
そんな三島で「訪れる人が地域とつながるきっかけ」を生み出しているのが、株式会社シタテ代表の山森達也さんです。
ゲストハウスや芸術祭の運営を通じて仕立てるのは、既存の観光や移住の枠ではまとめられない、新しい体験と関係性。
そこには、「関係人口」という言葉への深い洞察がありました。

関係人口は“友達以上恋人未満”の関係性!?

「関係人口って、友達以上・恋人未満みたいな関係だな、と時々思うんです。」
山森さんは、そう表現します。
一般的に関係人口は、地域への「訪問頻度」や「関わりの濃さ」で語られることが多い概念です。しかし山森さんは、その測り方に違和感を持っています。
「訪れた回数や滞在日数といった数字で、関係人口を測るのはナンセンスですよね。その人のライフスタイルやライフステージによって、心地よい関わり方は変わって当然だと思ってます。」
大切なのは、その地域を好きでいること。あるいは、好きな人やモノ・コトがその場所にあること。それだけで、すでに地域とつながっている存在(関係人口)だと言います。
多様な関わりしろをつくり、一人ひとりの温度感に寄り添った「好き」の総量を増やすことこそが、山森さんが体現する関係人口の在り方です。
東京から三島へ。「実行確率2%」から始まった挑戦

山森氏自身も、かつては三島市に関わる「関係人口」の一人でした。
東京の人材コンサルティング会社に勤め、平日は新幹線で東京へ通勤する生活。
転機となったのはコロナ禍の在宅ワークです。三島で過ごす時間が増え、地域との距離が一気に縮まりました。
「ゲストハウスとシェアハウスが一緒にできたら面白いよね!」
三島で仲間と交わした何気ない会話を、山森氏は冷静に分析していました。
「こういう話は盛り上がっても、98%はやらない理由を探し、実際に動き出さないまま終わるんです(笑)」
「面白いんだったら、やろうよ!」
山森氏はその「2%」に賭け、ゲストハウスとシェアハウスを誕生させました。
株式会社シタテという社名には、地域により深く踏み出す「○○したて」を応援するという意味に加え、街の素材を活かし、今の時代に合わせて「仕立てる」という意志が込められています。

ゲストハウス運営と三島満願芸術祭

山森さんが運営するゲストハウスは、観光やビジネスなど、どんな目的でも利用可能。現在はインバウンドの利用も増え、宿泊者の約4割を占めるといいます。
10年以上閉まっていたお寿司屋さんを改装した「ゲストハウスgiwa(ギワ)」は、ユニークな過ごし方を叶えられる4つの客室と、お寿司屋のカウンターを活かしたラウンジでゆったりとした時間を楽しむことができます。
宿には、人と人がつながるための“仕掛け”が色々と用意されています。その1つが「晩ごはんガチャ」。
訪問者がランダムに選ばれたまちの飲食店に足を運び、地域の人と交流するきっかけになっています。

まちと関わる入り口が「ゲストハウス」だとすると、まちと関わり続けるために機能しているのが山森さんが実行委員長を務めている「三島満願芸術祭」です。
「三島を好きになった人が、次に来る理由。芸術祭は(地域の懐に飛び込む)絶好の口実になると思っています。」
実際、宿に泊まりに来た人が翌年には芸術祭の観客となり、その後運営スタッフとして加わるという、関係人口の深化が起こっています。
三島の「まちやど」株式会社シタテのこれから

山森さんが現在取り組んでいるのが、「まちやど」としての、さらなる展開です。
2030年までに70床規模へと拡大する構想もあり、訪れる人と地域の接点をより多く創出しようとしています。
ただし、効率化だけを追求するつもりはありません。
「無人チェックインにすれば効率も利益も上がる。でも、それだとやりたいことから離れてしまうんです。」
と語り、あえて人が関わる余白を残すことで、交流が生まれる設計にこだわります。

「関係性が固定化しがちな地域に、新しい風が入ることで、変化やチャレンジが生まれる。そういう土壌をつくりたい!」
「好きな映画を誰かに紹介したくなる感覚に近いんです。“三島は面白い”って、自然に。」
「家から駅まで行く途中に、知り合い一人(ひとり)とすれ違う。そんな些細なことで、街はもっと楽しくなる」
山森達也氏が仕立てる三島の未来は、“セレンディピティ(偶然の出会い)”と、関わるすべての人を主役にする、温かな物語として、これからも紡がれていきます。
【リンク】
▼ゲストハウス「giwa(ギワ)」 公式WEBサイト
https://www.giwa-guesthouse.com/
▼SHIZUOKA YELL STATION団体情報ページ
▼三島満願芸術祭 公式WEBサイト
取材・文/JUNK itamura

