事例紹介

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「下田にズブズブ」の27歳。関係人口創出の第一歩は地域の魅力を伝えること(株式会社しもズブ)

まちづくり
「下田にズブズブ」の27歳。関係人口創出の第一歩は地域の魅力を伝えること(株式会社しもズブ)
活動団体 株式会社しもズブ
活動場所 静岡県下田市

ズブズブとは、特定のもの・ことに深くハマり込む様子を表すオノマトペです。それはまるで泥沼に沈み込むように…。

 

伊豆半島の先端近くに位置する下田市は、おいしい海産物と美しい海で知られる港町です。この下田市にズブズブとハマりこんだのは、藤井瑛里奈さん(27)。2020年に「株式会社しもズブ」を立ち上げました。「下田にズブズブ」な自身の様子をそのまま社名としました。

 

開業後、藤井さんは下田市を中心に関係人口増加施策に励んでいます。

今回は藤井さんに、下田市の魅力としもズブの取り組みについてお話を伺いました。

 

“下田にズブズブ”な藤井さんが立ち上げた「しもズブ」

“下田にズブズブ”な藤井さんが立ち上げた「しもズブ」

しもズブは2020年10月に創業した、比較的新しい会社です。下田市を拠点に、関係人口増加事業とSNS運用支援事業を展開。下田市とその周辺地域の地域活性化に一役買っています。

 

地域貢献を主軸とした事業であることから、藤井さんはてっきり地元出身者かと思いきや違うそう。

 

藤井さん「私は埼玉県出身です。しもズブを創業するまで、実家から離れた経験もほぼありませんでしたね(笑)」

 

下田観光→ワーケーション→会社を創業

しもズブの創業の背景は、藤井さんが下田市に惚れ込んだことでした。

 

藤井さんは大学卒業後、カメラマン兼WEBデザイナーとして活動。フリーランス仲間から「下田市はとても良いところだよ」と勧められ、2020年1月、初めて下田市を訪れました。

 

藤井さん「最初はただの観光客でした。1泊二日という短期間ではありましたが、綺麗な海や地元の皆さんとの温かな交流を楽しみました」

 

下田観光→ワーケーション→会社を創業

 

下田旅行から半年後の7月。藤井さんは下田市を再訪します。

 

藤井さん「二度目はワーケーションとして、2週間滞在しました」

 

この滞在期間中、藤井さんは下田市の新たな魅力に気づくと同時に、地域が抱える課題にも直面したといいます。

 

藤井さん「夏の観光資源に頼り切っている現状がありました。下田市には美しいビーチがあります。そのため夏は、県内外のあちこちから観光客が訪れる。一方で他の季節は閑散期で、観光客が大幅に減ります」

 

課題を解決するには、「季節関係なく下田市を訪れたいと思う人(=観光客や関係人口)」を増やす必要があります。これに対し「自身のスキルや経験を活かせるのでは?」と考えた藤井さんは、下田市での会社設立を心に決めます。

 

そして10月、「株式会社しもズブ」を設立しました。初めて下田市を訪れてから約9ヶ月後のことです。

 

藤井さん「創業にあたり、地域の皆さんも応援してくれました。私の挑戦を後押ししてくれる空気があり、『ここなら自分のやりたいことができるかもしれない。私が大好きな下田市に何か恩返しがしたい』と感じました」

 

南伊豆町の関係人口創出イベントを企画

現在のしもズブの主力事業は、関係人口増加事業です。20年より、下田市のとなりに位置する南伊豆町との協業で、ワーケーション誘致を行っています。

 

藤井さん「関係人口を創出する第一歩として、まずは県外の皆さんに街を訪れてもらう必要性があります。来訪する機会のひとつとして、ワーケーションに関するイベントを実施しています」

 

南伊豆町の関係人口創出イベントを企画
ワーケーションイベントの様子

 

しもズブでは3,4ヶ月に一度、自営業者や場所に捉われない働き方をしている人に向けたイベントを開催。ワーケーションに絡めて、ヨガやご褒美旅行など旅のテーマも多種多様です。各回5名から10名が参加し、いずれも首都圏や名古屋、小田原からの参加者が中心だといいます。

 

イベントの開催を通じて、うれしい変化もありました。参加者の半数以上がリピーターに。閑散期である11、12月にイベントを開催しても、集客に困ることはありませんでした。

 

藤井さん「イベントをきっかけに新法人の設立につながりました。下田市と南伊豆町で計3社。もともと個人事業主だった方々がワーケーションを機に各地で開業しました」

 

SNS運用支援事業で地域×関係人口をつなげられる存在に

しもズブが提供する「SNS運用支援事業」では、より地域の中に入り込んでいる実感があるといいます。

 

藤井さん「下田市と南伊豆町の事業者さんに向けたSNSの運用サポートを行っています。Instagramの使い方から投稿内容のアドバイスまで相談内容は多岐に渡ります。講座を開いたり、アカウントの運用代行をしたり、皆さんの要望に合わせたサービスを提供していますね」

 

これにより、地域の各事業者との関係性も深まりを増しています。藤井さんはこれを通じて「関係人口と事業者をつなげられる存在になれたら」と語ります。

 

藤井さん「関係人口が増え、地域の事業者さんとの協業や地元での創業を考える際、一対一だとどうしてもハードルが高いと感じる場面もあるでしょう。そんな時に私という緩衝材を挟めば、スムーズに話が進むかもしれない。そんな存在になれたらと思うんです。こうしてつながりを構築していけば、いつか私を介さずともプロジェクトが生まれる未来が来るかな、と」

 

関係人口の藤井さんから見た 関係人口とは

かつては藤井さん自身も関係人口に該当する立ち位置でした。創業当初、「関係人口にあたる私だからこそわかる、“私のような関係人口の増やし方”があるかもしれない」という思いがあったそう。創業から3年が経ち、新たに見えてきたものがありました。

 

藤井さん「関係人口はなかなか定義するのが難しいものでもあります。ワーケーション誘致施策では関係人口の増減を図る際の指標として『1年以内の再訪率』を用いていますが、それだけが地域との関わり方ではないと感じます。例えば長期間に及ぶ滞在やコミュニティに深く入り込んだ関わり方など、地域との関係性の作り方は人の数だけある。さまざまな魅力にあふれた下田市は、今後このようなつながりが増えていく可能性の高い地域だと思いますね」

 

事業を通じて下田に恩返しがしたい

事業を通じて下田に恩返しがしたい
写真:松橋樹

下田市の魅力を知り、地域の人の温かさに触れ、ゼロから会社を立ち上げた藤井さん。さまざまなプロジェクトに精力的に取り組んでいますが、その根底にある思いは変わりません。

 

藤井さん「下田市は私にとって故郷のような場所です。出生地でも過去に住んだことのある街でもありません。でも、『ここがふるさとだ』と思わせてくれた初めての地です。そう思わせてくれたことに対する感謝があります。この感謝を下田市に還元したい。そのためには、私のような人を1人でも多く作ることが効果的だと思うんです。1人、また1人と増えていくことで、下田市全体の活性化につなげていきたいですね」

 

(文)静岡県関係人口ライター