子育て・教育
伊豆
安全に遊べる美しいビーチを守る。下田の海で活躍する、下田ライフセービングクラブ
活動団体
特定非営利活動法人 下田ライフセービングクラブ
活動場所
下田市

下田での安心して楽しめるマリンレジャーを見守る、歴史あるクラブ

静岡県下田市内の海水浴場で、監視活動やビーチクリーンを行っている下田ライフセービングクラブ。「Safe & Clean -人のつながりを大切に-」をテーマに、夏場の活動の他、教育や地域貢献面での多彩な活動を行っています。活動のスタートは、1978年、任意団体として海岸のゴミ拾いを行った吉佐美大浜から。1本のレスキューボードと共にオーストラリアからライフセーバーが来日し、日本初のレスキューボードのトレーニングが始まったのも吉佐美の浜です。その後、1993年に下田ライフセービングクラブを設立。2005年にNPO法人化し、現在まで地域に根ざした活動を行っています。

現在の会員数は192名。会員の多くは首都圏在住の大学生で、夏休みは泊まり込みで活動に参加します。大学卒業後も続けている会員は、休日に下田に来て活動に参加しています。

下田での安心して楽しめるマリンレジャーを見守る、歴史あるクラブ
下田市内の海水浴場を中心に活動している下田ライフセービングクラブ

前理事長で現名誉理事長の山口智史(やまぐち さとし)さんも、学生時代から下田に通って活動を続けていましたが、4年前に地域おこし協力隊となり移住。現在は下田市から委託される業務やトレーニングジムの経営を仕事としています。

山口さん「団体発足当時の日本には、ライフセービングという概念はまだ無かったそうです。創設メンバーは、オーストラリアの団体が行っている活動に感銘を受けて始まったと聞いています。現在の下田ライフセービングクラブの会員数は、国内でもトップクラスです」。

埼玉県出身で、ディレクター・国際交流担当の田村祐朔(たむら ゆうさく)さんも、大学生から下田ライフセービングクラブの活動を続け、現在は下田市に移住しています。

田村さん「クラブの活動のひとつにオーストラリアのマルチドーSLSCとの交流事業があります。姉妹クラブとしての交流は25年以上継続しています。互いのシーズンオフの時にメンバー数名ずつが行き来して、これまでにオーストラリアからは約85名、下田からは約350名がオーストラリアに行っています」。

名誉理事長の山口智史さん(左)とディレクターの田村祐朔さん(右)

活動は夏以外も。年間を通して地域貢献活動に従事する

近年はオフシーズンの活動も増えています。そのひとつが地域での安全啓発教育活動です。水辺の事故防止・安全の啓発を図り、未来のライフセーバーを育てるジュニアライフセービングに取り組み、小・中学生、高校生に水難事故から身を守るための指導を行ったり、市内の小・中学校などの安全教育を行う授業で派遣講師も務めたりしています。

中学校では総合教育のひとつで、サーフィンや釣り船に乗るというマリンアクティビティ授業がありますが、その際に同行して、生徒の安全を見守ります。

さらに、2024年からは海上保安庁と合同で、全校生徒を対象とした、体育の授業で水の中で身を守るといった授業も担当しています。

活動は夏以外も。年間を通して地域貢献活動に従事する
海水浴シーズンに備えて、会員たちは冬の寒い海でも練習に励む
子どもたちにライフセービングの仕事について学んでもらうジュニアライフセービングの様子
下田市内の中学校で行っている、海難事故から身を守るための水泳授業の様子

一方でライフセービングはスポーツの側面もあり、下田ライフセービングクラブの会員は、競技大会に積極的に参加しています。普段は個人でトレーニングをしていますが、クラブとしても週末に合同で練習をしています。

山口さん「実は競技面でも強い団体なのです。2009年、2010年は、全日本ライフセービング選手権で優勝していますし、2025年の11月にニュージーランドで開催された国際大会には、日本代表として1名が出場しました。2024年の世界大会で世界2位になったメンバーもいて、競技に対するモチベーションが強いメンバーが揃っています」。

田村さん「オーストラリアの団体との交流でも、本場のライフセービングの技術を学び、競技力強化のためのトレーニングをしてきます」。

大会出場メンバーには、世界選手権準優勝者、全日本選手権優勝者も
全日本ライフセービング選手権での優勝経験もある下田ライフセービングクラブ
オーストラリアの姉妹クラブ、マルチドーSLSCのメンバーと

マリンスポーツが盛んな下田市では、海で泳ぐオープンウォータースイミングやサップなどの大会も数多く開催されます。こうした大会の誘致活動や運営の他、安全管理、監視、救助も、クラブに任される重要な活動です。

 

地域拠点の活動基盤を強固にし、関係人口の集団ならではの柔軟性をさらに活かしたい

下田ライフセービングクラブは、活動する会員のほとんどが首都圏在住で、関係人口として活動しやすい、柔軟性のある団体です。反面、学生が中心のため、7月は期末テストと重なり活動に参加できない学生が増え、活動できるメンバーが不足する懸念があることが大きな課題です。団体では、近隣からの参加も含め、継続的に活動できるメンバーを増やしていきたいと考えています。

山口さん「サークル感覚で参加する学生も多いため、4年間の活動で終わってしまう人が大半で、社会人になっても続けているメンバーに負担が集中してしまう現状は改善しなければと思っています。また、活動をする下田市内に事務所という物理的な拠点がなく、会員たちはクラウド状態でつながっています。首都圏在住のメンバー同士の交流が日常的にできるメリットがありますが、地域での活動が増えてきている現在では、夏以外や平日にも下田で活動できる会員を増やしたいですね」。

田村さん「将来的には下田市内に事務所をつくり、NPOとしての職員が雇えるような資金調達を可能にしたいです。その制度づくりはこれからの課題ですが、それが実現すればメンバーの負担も軽減でき、下田市や地域の要望に応えやすくなると思います」。

地域拠点の活動基盤を強固にし、関係人口の集団ならではの柔軟性をさらに活かしたい
ビーチクリーン活動は、シーズン中は海水浴場で、シーズンオフは他団体の活動に合流して行っている

クラブでは、今後の組織運営と新規会員を増やすため、広報やPRができる人、また、スポーツツーリズムや教育分野に興味がある人を求めています。

山口さん「スポンサーのアパレル会社には、社会貢献活動をメインにサポートしてもらっています。そうした会社とのやり取りもあるので、クリエイティブ系や社会貢献に興味がある人も大歓迎です。ジュニアライフセービングの講師を担当しているメンバーは、普段は東京で幼稚園の先生をしています。教育関係の仕事に就いている人にも向いていると思います」。

市からの委託事業や地域の他組織と協働する活動が増えているなかで、下田市の関係人口創出のために、夏のビーチでの監視活動以外にも、国際交流や教育面で、もっとクラブを活用してほしいと、田村さん。

田村さん「ここ数年、二地域居住が話題ですが、ライフセーバーは、ほとんどが二地域居住者です。社会貢献に価値を感じる人もいるし、コミュニティに入れるということにメリットを感じる人もいる。関係人口という面に注目してもらえれば、いろいろな参加スタイルや価値が見出せると思います。そういう人をどれだけ増やせるか。そのためにも、いろいろなことをやっていかなければと考えています」。

ライフセーバーは体力勝負という印象が強いですが、地域貢献や国際交流という視点から組織を支えるスタッフとしての参加も可能です。すでに関係人口がたくさん活躍している下田ライフセービングクラブなら、新たな仲間ややりがいも見つけられそうです。

取材・文/竹内友美