事例紹介

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愛する海に「アジがとう」!面白く、カッコよく伊豆の海の保護活動に取り組む!

環境
愛する海に「アジがとう」!面白く、カッコよく伊豆の海の保護活動に取り組む!
活動団体 一般社団法人サバーソニック&アジロックフェスティバル
活動場所 静岡県伊東市

「音楽活動や音楽フェスをしている団体!?」と思わせる団体名ですが、実は海洋プラスチック問題や藻場の減少など、海が抱える問題に真剣に向き合って活動しているのが「一般社団法人サバーソニック&アジロックフェスティバル」です。

実は私自身、団体のトップを務める武智一雄さんとはオンラインセミナーで何度かお会いしていました。シャレの効いた(笑)団体名とは裏腹に、ストレートで熱い発言をする武智さんにはいつか直接お会いして話がしたいと思っておりましたので、今回の取材を非常に楽しみにしておりました。

伊東市を拠点に、地元の高校生や小学生までも巻き込みながら活動する武智さんに、活動内容や思いを伺いました。

2万人を動員した「サバーソニック・アジロック・フェスティバル」

「サバーソニック・アジロック・フェスティバル」から始まった団体の活動

生まれも育ちも伊東市という武智さんは、伊東駅前で三代続くカメラマン一家で育ちました。現在はカメラマンを本業としながら、大学の美術講師や旅館運営のアドバイスなど、幅広く活躍しています。

団体の活動の発端は2017年。
当初は、伊豆・伊東の美味しい魚介をアピールしようと地元の仲間が中心となってイベントを開催するというものでした。
「サバーソニック・アジロック・フェスティバル」と銘打ち、伊東魚市場をメイン会場として、地元飲食店の露店、地魚つかみ取りなどを開催。メディアにも大きく取り上げられたことから、初回にして約2000人が来場して盛り上がったそうです。

翌2018年6月、2019年6月にも開催。回を重ねるごとに来場者は増え、第3回のイベントには2日間で約2万人を動員。
イベントとしては大成功と言える内容でした。

「サバーソニック・アジロック・フェスティバル」から始まった団体の活動
環境問題を考える取り組みも

理念「WE DON’T WANNA KILL THE OCEAN」の誕生

一方で、団体の目的や方向性を再定義させられる出来事が発生しました。
イベントで発生する「ゴミ問題」です。
出店者が提供する料理に使う紙皿やプラスチックカップなど、イベント終了後には大量のゴミで溢れました。さらに、出店者がゴミを海に捨てていたという悲しい報告も耳にしてしまいました。

武智さんは「非常にショックでした。もう活動をやめようとも思いましたが、思いきって環境問題に取り組むことにシフトする決断をしました。イベントで楽しく盛り上がっているより、環境問題に真剣に取り組む方がカッコいい。実際に、イベントを通して魚や海のことに詳しくなってくると、漁獲量の減少や磯焼けの問題など、自分たちが育った地元の海が大きな課題を抱えていることがわかってきました」と振り返ります。

ここで団体の理念「WE DON’T WANNA KILL THE OCEAN」を掲げ、海の環境保護のための活動に本格的に着手していくことになります。

理念「WE DON’T WANNA KILL THE OCEAN」の誕生
活動メンバーの鈴木貫太くん・稀子さん兄妹

小学生や高校生たちも環境問題に向き合いながら活動に参加

当初は大人のメンバーが中心となり、伊東オレンジビーチのクリーン活動をスタートしました。
しばらくクリーン活動を進めていると、地元の高校生が「自分たちもビーチクリーンをやりたい」と参加し始めて仲間に加わってきたといいます。
ビーチクリーン活動をしながら、高校生たちも交えながら海の問題などをディスカッションする機会を増やしていったことで、環境活動の幅も広がっていきました。

2021年12月には、それまでの任意団体から「一般社団法人サバーソニック&アジロックフェスティバル」として法人を設立するに至りました。
とても興味深いのが、現在10人いる理事のうち6人が現役高校生だということです。「自分たちで起業して会社をやってみたい」という高校生から上がった言葉を形にした結果だそうです。

また、団体の活動メンバーの中には、地元の小学生たちも含まれています。
鈴木貫太くん(小学5年)・稀子さん(4年)の兄妹もそのひとり。
2人に団体に参加した理由を聞いてみると、「お母さんからメンバーを募集していると聞いて参加することにしました。メンバーになる前から、たまにビーチクリーンに参加していて、ゴミがたくさん落ちていて環境に良くないと思いました」と、丁寧に答えてくれました。

武智さんは「環境問題にそもそも関心ある大人や子どもは何も言わなくても活動します。そうではなく、関心ない子どもたちをどのようにこちらを向かせられるかが大事。『カッコいい』とか『面白そう』と思わせることが、関心を持つきっかけになればいいと思います」と話します。

小学生や高校生たちも環境問題に向き合いながら活動に参加
イベントを運営する高校生メンバーたち

藻場の現状から海の環境問題をより深く考える取り組みへ

高校生たちは毎週のビーチクリーン活動に加えて、定期的に勉強会を開いて学習したことのプレゼンテーションで相互理解を図っているそうです。
武智さんの長男・燦くん(高校2年)もメンバーの一人です。「海釣りの根掛かりがゴミになることや、鎌倉の観光渋滞の問題など、自分で調べたこともメンバーが調べたことも両方が勉強になります。学校では教えられないことも、ここでは知ることができます」と、燦くんは話します。

2022年5月には、コロナ禍で開催を見合わせていた「第4回サバーソニック・アジロック・フェスティバル」を3年ぶりに開催しました。
高校生メンバーも企画から準備、設営、運営まで参加したそうです。
「ゴミゼロイベント」を目指し、食べられる皿(イートレイ)を導入したことで持続可能なイベントへと発展しました。

そして今年から本格的に活動し始めたのが「藻場」の保全・保護活動です。
藻場とは、海藻や海草が群落を形成している場所のことで、魚貝類が生活したり、産卵したりするため「海のゆりかご」と呼ばれています。
特に沿岸部の藻場は、埋め立てや化学物質の影響などにより、年々減少していると言われています。二酸化炭素を吸収する役割もある藻場の現状を知り、広く環境問題について学ぶ取り組み「藻ニターツアー」も開催しました。

現在、藻場を可視化することで情報を蓄積、将来の藻場の再生に活かすためのアプリも開発しているそうです。
武智さんは「水産関係者に限らず、ダイビングや釣りをしているような一般の人でも投稿して環境活動に参加できるようなアプリを目指しています」と、先を見据えます。

藻場の現状から海の環境問題をより深く考える取り組みへ
「WE DON’T WANNA KILL THE OCEAN」に共感するメンバーを募集

環境のことを「面白く」「カッコよく」活動しよう

現在、団体で主に活動しているのは30人程度で、会社員、行政職員、画家など職業はバラバラ。伊東出身の人もいれば、移住してきた人、県外に住んでいる人など出身も経歴も人それぞれです。
わざわざ川崎市から「ビーチクリーンをしたい」と参加しにきた人もいるそうです。

「いろんな人がいた方が面白いです。理念であるWE DON’T WANNA KILL THE OCEANに賛同してくれて、環境のことにおもしろ楽しく、カッコよく活動していこうという人たちと繋がっていきたいです」と武智さん。
団体のホームページを見ると、その思いが伝わってくるはずです。
興味を持った皆サバ、参加してみてはイカがでしょうか?

一般社団法人サバーソニック&アジロックフェスティバル
https://www.sabasonic-ajirock.com

Facebookページ
https://www.facebook.com/sabarsonicajirock

(文・写真)静岡県関係人口ライター