事例紹介
街を作るのは人と人、伊東の賑わいを再び。
まちづくり活動団体 | 特定非営利活動法人R-Ship |
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「シャッターを開けたい。」
そんな梶山さんの想いから始まった、R-ship。伊東には、駅前を中心に9つの商店街があります。その3分の1が閉まっていた2018年。「シャッターが全部開けば、大きな商業施設じゃん!」自らを商売人と語る宮城県出身の梶山さんは、縁もゆかりもなかった伊東にポテンシャルを感じ、2019年に特定非営利活動法人R-shipとして伊東で活動を開始しました。
R-shipの語源は、Relationship(関係性)とShip(船)をかけたもの。「地域と乗組員が一丸となって地域活性を行うことでより元気な街にしていこう」というビジョンを掲げ、現在は月一で開くI TO MARCHE(アイ・トゥ・マルシェ)の他、伊東の情報発信基地「ぬくもーる」の営業などを主軸として、商店街や伊東の賑わいを縁の下から支えています。
「知り合いもいない中、なぜ伊東に?」そんな疑問が渦巻く中、理事長の梶山俊樹(かじやま としき)さん、社員の生川衛(なるかわ まもる)さんにお話を伺いました。
東日本大震災をきっかけに考え始めた「地域活性」。1年間市役所に通い続けた結果、契約へ。
理事長の梶山さんは宮城県出身。東京の会社で働いているさなか、東日本大震災を経験しました。東京で見た震災のライブ映像や後日実際現地に行ったことで、梶山さんも「地域に関わりたい」と思うように。「東京から2時間でかつ5,000円以内で行けるところ」という基準で地図にコンパスを当て、いろいろな地域をめぐってみた結果、行きついた土地が伊東でした。海あり、温泉あり、9つの商店街あり、という人が集まる環境が整っているというポテンシャルの高さに惹かれたと言います。隣町の宇佐美に祖母がいるものの、それ以外のつながりはないままに、まずは市役所に猛アプローチ。1年後に市役所との契約を取り、その後商工会議所との契約など、少しずつ信頼を勝ち得ていきました。今では、個々のお店からHPやポスター制作の依頼が飛び込むなど、身近に頼れる存在となっています。
子どもたちや街の人たちに言われる「ありがとう!」で全てが吹き飛ぶ
2021年現在、R-shipは3年目。事業の中心は、創業当初から続く月に一度開催するI TO MARCHEです。伊東の商店街には子ども連れの光景が少ないという点に着目し、必ず子ども向けの企画を入れるようにしていると言います。2年目からは商店街を巻き込み「子どもたちがわくわくドキドキするイベント」をモットーに、商店街を通ってマルシェをゴールとした企画を毎月実施。2019年のハロウィンの企画の際は400人もの子どもが商店街中を練り歩きました。2021年の4月には、軒並み中止となった成人式や卒業式、入学式の人たちを祝う企画を実施。5月には、45年前から続く伝統ある『伊東祐親まつり』とマルシェとのコラボレーションも。身一つで乗り込んだ日から3年、着々と地域に根ざしつつある中、人のぬくもりが伝わる企画を日々作り続けています。
伊東の今の課題は若手が若くないこと。頭がやわらかい若い子たちに来てほしい。
「伊東は東京を拠点に2時間で行ける」というアプローチを若い子にしたいという梶山さん。2019年にはアートウォークを実施しました。東京の芸術学生のために街が場所を貸し、商店街中の店内などに既存の作品を飾ってもらうという企画です。首都圏から学生の家族や友人がお店に訪れ、作品とともに伊東をSNSで発信してもらうというスキームは大好評。あいにく2020年以降はコロナ禍で実施ができませんでしたが、そのスピリットを残すべく、R-shipの1階を大学生に丸ごと貸出し、伊東市の老舗建築会社「大同工業」さんのご協力のもと学生主導で大改造しています。建築やデザインを学んでいる学生らの実践の場となっており、5月からは「チャレンジショップ」として実際のテナントが入り活用されていく予定です。
「R-shipに言えば若い子たちに向けたことをやってくれる!」と言われるような存在になりたい、という梶山さん。未来を担うのは若い子であり、若い子に伊東の魅力を知ってもらうアプローチをしていきたいと語ります。地域活性を目指す中で、R-shipが目指しているものの1つが「雇用を生むこと」です。「伊東で一番いい就職先でありたい」と笑顔で語ります。
身近に海や温泉があり、チェーン店が少ない分面白さを自分で見つけられることが伊東の街の魅力。
R-shipでは、I TO MARCHEなどイベントのボランティアを随時募集しています。自ら街に一歩飛び込むことで、お二人を魅了した人とのつながりや地域の温かみに触れることができるかもしれません。
(文・写真)静岡県関係人口ライター