事例紹介

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明るく、楽しく、高齢者を守る。 さあ、「ぴくにっく」に出かけよう。

健康・福祉
明るく、楽しく、高齢者を守る。 さあ、「ぴくにっく」に出かけよう。
活動団体 NPO法人ぴくにっく
活動場所 東部[富士・富士宮]
盛り上がる会場。目の行き届く人数ということで参加者は上限50名

「じゃ次はLOVE IS OVER歌うよ!さっきいっぱい練習したね。はい輿水さん、前に出てきて。いくつになったんだっけ?93歳?」

前島るみ子理事長の良く通る声が会場を盛り上げます。指名を受け、堂々振る舞う輿水さん。50名ほどの参加者も、輿水さんに負けまいと大きな声で歌い上げます。皆さん、元気でいきいきとした表情が印象的。歌を歌うことで、心肺機能の向上と認知症の予防が期待できるそうですよ。
取材にうかがったのは「NPO法人ぴくにっく」が主催する高齢者向け講座「きょうから始めるフレイル予防」。フレイルとは加齢により体力や気力が弱まっている状態のことで介護予防のキーワードとして、今、注目を集めています。
「ぴくにっく」は高齢者の健康づくりを目的として、2018年に設立されたNPO法人。フレイル予防講座を始め、歌の練習会、脳トレ、高齢ドライバー向け安全運転教室、さらに運転免許自主返納サポート事業など、富士・富士宮エリアを中心にさまざまな活動をしています。

参加者を盛り上げ、寄り添う理事長の前島さん

前島さんに設立のきっかけを伺いました。
「最初はね、ボランティアで歌の仲間と近隣の福祉施設に歌いに行っていたんですよ」
実は前島さん、もともとジャズを歌っていらっしゃったそう。(ご本人いわく、プロではない)
「ある老人保健施設で、80人くらいの前で歌ったんです。懐かしい昔の歌も交えて。そうしたら皆さん、すごく感動してくださって、涙を流して喜んでくださったんですよ。逆に勇気をもらいました。そんな姿を目の当たりにしたら、これは続けなければと思いますよね」
ところが2020年、コロナ禍により一切の活動ができなくなってしまいます。
「その時に高齢者の皆さんが孤立しているという情報を、いろいろなところから聞いたんです。孤独で寂しいお年寄りがいっぱいいるんだって知って、いくらコロナ禍だからって、こうしちゃいられない。何かやらなくちゃと思ったんです」
そこで前島さんが考えたのが健康づくり講座。ところが案の定、会場を提供してくれるところが見つからない。
「でもね、富士宮市の重林寺さんが、本堂で良ければ使ってくださいとおっしゃってくださったんですよ」
できる限りの感染対策を講じつつ講座を開催したところ、新聞社が取材に訪れ、記事にしてくれたおかげで予想以上の反響がありました。これが大きなきっかけだったと前島さん。活動を再開し、現在は講座以外にも、こども食堂や、みんなで一緒にご飯を作って食べる「まんぷくサンデー」など、人が集い、語る機会を数多く提供しています。

司会進行は、副理事長の山嵜さんが務める

さて本日の講座では、歌の他に体操や自動車運転の誤操作防止訓練が行われました。これがなかなか楽しいんです。音楽に乗せて、指示に従って紅白の旗を上げたり下げたり。いわゆる「赤上げて。白下げて」というゲームですね。参加されている方は、ほとんどが常連メンバーさん。中にはもう60回以上という強者もいらっしゃいます。通い続けたくなる魅力は一体どこにあるのでしょう。参加者の皆さんにインタビューしてみました。

インタビューを受けてくださった3名様

まずは介護施設で送迎バスのドライバーをされているという男性。(写真右)
「いろいろ教えてもらって楽しい。自分から積極的に前に出て歌い出す人や踊りだす人もいるんだよ。ここに来る人たちは皆元気だね」
ちなみにこの方、今日が30回目ということで記念表彰を受けていました。
お隣の女性にもお話を伺います。(写真左)
―ご夫婦ですか。
「いや違うよ。ここで知り合った友達」
―ごめんなさい。失礼しました。
まだ参加し始めて日が浅いとおっしゃっていたものの、今日が20回目とのこと。
「歌って、体を動かして、楽しいんだけど、やっぱり一番はここで皆に会えることだね」
お二人の前の席に座っていた男性(写真中央)も「『ぴくにっく』は楽しいね。一番楽しいね」とおっしゃっていました。
今日が初めてという方にも伺います。
―どうですか。参加してみて。
「今日は歌が多めだったので、次回は脳トレに参加したいですね」
聞けば福祉関係施設にお勤めだそう。

ぴくにっく初参加。「とても楽しく参考になりました」

「勤め先で行うレクリエーションに迷っているので、参考にさせていただこうと今日参加したんですよ。友達を誘うにしても、まず自分が体験してみようと思って」
なるほど。そういう利用の仕方もあるのですね。これは「ぴくにっく」の信念がさらに伝播するヒントになりそう。早速、前島理事長にお伝えしよう。

参加者は手分けして受付や資料配布、また終了後の後片付けをお手伝い。93歳の輿水さんはモップ係

「そうなんだよね。そういう方たちに来てもらって、覚えてもらいたい。そして各施設でどんどんやってほしいんですよ。実際に視察に来た方に話を聞くと、一番困っているのがレクリエーションなんだって。だから皆さん、ここに勉強に来て、覚えてくれたらいいなって」
―せっかくの良い取り組みですから、富士・富士宮エリアだけではなく、静岡県全域、さらには県外まで広めたいですね。
「うん。東部だけに限らず、県内中部・西部の福祉施設の方も積極的に来てほしい。私も実際に行っているしね。私たちは歌や運動など、レクリエーションをメソッド化しているので、定期的に各講座に通ってもらい、ノウハウを覚えて、それぞれの地元でやってほしいですね」
―他に、今望まれていることはありますか。
「高校生がボランティアとして参加してくれるとうれしいな。それから歌えるボランティアも募集中です。実は今、ちょっと喉を痛めていて病院に通っているんですよ」
とてもそうは思えない素敵な歌声を、先程拝聴しました。でも高齢者の皆さんの健康を守るためにも、前島さんにはぜひ健康に留意していただきたいものです。

「ぴくにっく」中心メンバーの皆様

最後に「ぴくにっく」という名前の由来を教えてください。
「可愛くて楽しい名前ってなんだろうと思ったら、浮かんだのがこれだった。子どもの頃、ピクニックが大好きだったからかな。でも、これ一択でしたね。『ぴくにっく』しかないと思った。利用者さんもご家族に『ぴくにっくに行ってくる』って出かけるんだって」
そうか。だから参加している皆さん全員が、子どものように無邪気な笑顔なんですね。

■NPO法人 ぴくにっく
https://www.npo-picnic.org/

■Facebook
https://www.facebook.com/2018picnic/?epa=SEARCH_BOX

(文・写真)静岡県関係人口ライター