事例紹介

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「ゴミを拾ってくれる人は、ポイ捨てをしない」御前崎市のビーチクリーン活動から考える持続可能な社会

環境
「ゴミを拾ってくれる人は、ポイ捨てをしない」御前崎市のビーチクリーン活動から考える持続可能な社会
活動団体 OMAEZAKI BEACH CLEANUP
活動場所 静岡県御前崎市

「今朝、母親と一緒に海岸で拾ったゴミを持ってきてみました。」

そういって、取材前にゴミ袋を見せてくれたのは、静岡県御前崎市のビーチクリーン活動を行うOMAEZAKI BEACH CLEANUP(御前崎ビーチクリーンナップ)代表の中山琴乃さん。

2020年10月から活動を開始し、2023年3月時点で23回の海岸清掃イベントを実施している中山さんに、
活動を通して考えているごみ問題や、持続可能な社会についてお話を伺いました。

目次
1)活動は月に1回、1時間。御前崎の海岸清掃
2)写真展や映画上映会で、持続可能な社会をPR
3)ビーチクリーンで見つけた、ささやかな楽しみ
4)ゴミ拾いを『気づき』に。豊かな自然を未来につなごう

活動は月に1回、1時間。御前崎の海岸清掃

活動は月に1回、1時間。御前崎の海岸清掃

中山さんが、御前崎ビーチクリーンナップの活動をはじめたきっかけは、犬の散歩中に海岸沿いで見かけたゴミと、そのゴミを個人的に拾っている(片づけている)人の姿でした。

毎日コツコツとゴミ拾いを行う人がいるのに一向に減ってはいかない海ゴミ。
「ゴミ拾いを一部の人だけに任せておいてよいのだろうか?」と、自分自身へ問いかける日が続いたそうです。

そんな中、「皆でゴミ拾いをやってみよう!」と知り合いに声をかけ、月に1回の清掃活動をスタートさせました。

同じ御前崎市内でビーチクリーン活動を行う団体は、すでにあったのですが、サーフィンに利用されている海岸や駐車場、ウミガメの産卵地として知られる砂浜など、限られたエリアでの清掃活動だったため、御前崎ビーチクリーンナップでは「場所を固定せず御前崎市内の海岸ならどこでも清掃に行こう」と決めたそうです。

メンバーも固定せず、参加できる人がボランティアとして清掃を行います。

1回のイベントで参加する人数は平均で30~50名。場所や天気にもよりますが、100名以上参加してくれた時もありました。

清掃活動の様子を積極的にSNSで発信しているのも団体の特徴で、静岡県外や海外からも環境保全に対しての賛同コメントが届いています。

写真展や映画上映会で、持続可能な社会をPR

写真展や映画上映会で、持続可能な社会をPR

御前崎市内の海岸清掃を通して、海洋プラスチックゴミの問題や、持続可能な社会をより意識するようになった中山さん。

昨年は、海岸清掃の様子を写真展で紹介したり、映画『マイクロプラスチックストーリーぼくらが作る2050年』を御前崎市民会館で催したりもしました。

世界的な取り組みとして近年耳にする機会が増えたSDGs(Sustainable Development Goals)。持続可能な開発目標の中で「海の豊ゆたかさを守ろう」と掲げられている背景には、世界中の海に毎年約800万トンものプラスチックごみが流れ込こんでいる問題があるそうです。

「このままだと2050年には、海洋プラスチックごみの量が海の魚の量を超こえるだろう」と警鐘が鳴らされていることを、地元で知る人はまだまだ少なかったので「環境保全への意識が高められたら!」と、この作品を選びました。

上映会には、池新田高校の生徒が手伝いに駆け付けてくれて、受付を担当してくれました。子どもから80代の方までの幅広い年齢が訪れ、市外からの来場も多くありました。

ビーチクリーンで見つけた、ささやかな楽しみ

ビーチクリーンで見つけた、ささやかな楽しみ

食品トレー、ビニール袋、釣りのルアーや糸、市街地から川を流れてくるゴミ。これまでに海岸で拾ったゴミの種類は数えきれないと言います。

「実は、海岸清掃で出たゴミの中で、捨てずにコレクションしているものがあるんですよ!」と紹介してくれたのは、使い捨てライター。
砂にまみれた色とりどりのライターをよく見ると、北陸など日本海側の住所が書かれています。さらには、中国語表記のライターも。

「海外から流れ着くゴミも御前崎の海岸には多いので、使い捨てられた珍しいライターを見つけると保管するのが趣味になっちゃいました(笑)」

ゴミ拾いが過度な負担や義務的になりすぎないように、宝探し感覚で楽しむ余白を見つけるのが中山さん流のボランティアなのだとか。

それでも、清掃活動を継続して行う中には、頭を抱え悩む場面も少なくないそうです。

その一つが、海で拾ったゴミの処理。現在、回収したごみは自分たちでごみ焼却場まで運搬しているそうなのですが、釣り針やガラス片など鋭利なものや、薬品が入った瓶など危険物もゴミの中には混じっています。

たばこの吸い殻が入った空き缶は、洗うのにもひと苦労。
「ボランティア参加してくれる人たちの苦痛にならないか?」と中山さんが抱え込んでしまい、自宅の庭には、まだ洗えていない瓶缶が残っているのだとか。

「近隣のビーチクリーン団体同士の交流もあるので、アドバイスを貰いながら、今後は行政や民間企業とも連携して解決していきたい」と話してくれました。

ゴミ拾いを『気づき』のきっかけに。豊かな自然を未来につなごう

ゴミ拾いを『気づき』のきっかけに。豊かな自然を未来につなごう

「ゴミを拾ってくれる人は、ポイ捨てをしない人だと思うんです。だから、この取材で話したことは、ゴミ拾いに興味がない人にこそ届いたら嬉しいな。」

中山さん自身も、ゴミの異常な多さを感じたのはごみ拾いをスタートさせてからだと言います。

「この何十年で世の中が便利になったことの裏側、大量消費のツケが回り始めていることに気づかせてくれたのがゴミ拾いでした。プラスチックは分解されにくい物質で、自然にかえるまでには気の遠くなる月日が必要です。ポイ捨て問題はもちろん、なるべくプラスチックを使わない生活への意識をもって貰えたら。」

御前崎ビーチクリーンナップの活動は、日曜日の午前開催が多く、回を重ねながら気軽に参加のしやすいかたちを工夫しています。

簡単な挨拶をしてからスタートしたり、集めたゴミを一ヵ所に集めて確認したり、海を背にして記念撮影をしたり。多くの言葉を交わさなくても、ボランティアを行う人同士の一体感が自然に生まれる面白さもあるそうです。

活動日の詳細や天候状況による開催可否は、インスタグラムやフェイスブックで都度案内しています。

「活動に興味を持ってくれたらもちろん嬉しいですが、大切なのは拾うことよりも捨てないこと。無理して海まで来なくても良いので、自分の出来る範囲で、皆がゴミをポイ捨てしない社会にしていきましょう。」

OMAEZAKI BEACH CLEANUP(御前崎ビーチクリーンナップ) WEBサイト
https://peraichi.com/landing_pages/view/omaezakibeachcleanup/

OMAEZAKI BEACH CLEANUP(御前崎ビーチクリーンナップ) インスタグラム
https://www.instagram.com/omaezakibeachcleanup/

(文・写真)静岡県関係人口ライター