事例紹介

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移住者としてまちと20年。『がんばらまいか佐久間』と地域のこれから(特定非営利活動法人がんばらまいか佐久間)

まちづくり
移住者としてまちと20年。『がんばらまいか佐久間』と地域のこれから(特定非営利活動法人がんばらまいか佐久間)
活動団体 特定非営利活動法人がんばらまいか佐久間
活動場所 浜松市

浜松市天竜区佐久間地域。静岡県西部に位置し、山々と天竜川に囲まれ、美しい景観が広がる一方で、地域の過疎化と高齢化が年々進んでいます。

平成の大合併から20年。行政サービスの隙間を埋めるNPOとして、この土地で活動する特定非営利活動法人『がんばらまいか佐久間』の事務局を訪ね、これまで積み重ねた活動の軌跡と、今直面している地域課題について話を伺いました。

 

※市民の芸術文化の振興と健康増進を図る『佐久間歴史と民話の郷会館』内に、『がんばらまいか佐久間』事務局はあります。

目次
1)特定非営利活動法人『がんばらまいか佐久間』とは
2)サラリーマンを経て、移住を決断
3)『がんばらまいか佐久間』の活動
4)新しい挑戦と、これからの地域貢献

 

特定非営利活動法人『がんばらまいか佐久間』とは

特定非営利活動法人『がんばらまいか佐久間』とは

特定非営利活動法人『がんばらまいか佐久間』は、市町村合併で行き届かなくなった行政サービスの隙間を埋める役割を担い、住民同士の支え合いを推進するため、平成17年(2005年)7月に設立されました。
住民が自分らしく生活できるように支援し合うことを目的に、高齢者支援や環境保全、文化の継承、地域活性に取り組む、佐久間エリア全戸参加型のNPOとして運営されています。

※佐久間エリアとは、県西部(遠州北遠)の旧佐久間町の意。平成の市町村大合併により、周辺10市町村とともに浜松市へ編入合併された。

 

地域のことは地域で考える自立精神のもと、安心・安全に暮らせるまちづくりを目指して、共に汗をかく、相互互助で活動を行っています。
一世帯の会費は月額100円。活動を支援する「活動会員」と、高齢者「賛助会員」で構成され、佐久間エリアの全所帯が会員として加入することを目指すまちづくり基盤です。

 

サラリーマンを経て、移住を決断

サラリーマンを経て、移住を決断

「関係人口には興味があります。まちに来る人、関わってくれる人が増えるのは歓迎したい。実は私自身も移住者なんですよ。」

『がんばらまいか佐久間』事務局長・河村秀昭さんへの取材は、そんな会話から始まりました。
田舎暮らしへの憧れがあり、佐久間へ単身移住したという河村さん。

「どうして移住先に佐久間を選んだのですか?」と質問すると、『ふるさと回帰支援センター』に移住相談をした際、ブースで案内されたのがきっかけだったと言います。

※ふるさと回帰支援センターは、地方への移住や二地域居住を希望する人々をサポートする施設(東京都千代田区有楽町の東京交通会館内)です。全国各地域の自治体と連携し、移住相談や情報発信をおこなっています。

 

会社員時代に縁があった浜松市に親近感もあり、佐久間へ移住することを決意します。
移住後、地域に役立てる活動として選んだのが『がんばらまいか佐久間』の事務局でした。
最初は3年のつもりが、地域とのつながりや高齢者支援への使命感から15年以上活動を続け、2025年現在も事務局長を務めています。

 

『がんばらまいか佐久間』の活動

『がんばらまいか佐久間』の活動

小さな役場的機能からスタートした活動は、地域の過疎化が進み、高齢化で活動会員が減る中で、地域の現状に合わせて変化を続けています。
会館の施設運営から地域活性化イベントまで、多彩な取り組みの中から、3つの活動を紹介して貰いました。

【1】過疎地有償運送事業(NPOタクシー)
地元のタクシー業者が廃業し、代わりとなる地域の『足』の必要性から生まれた事業です。
2020年9月から12月の期間で、浜松市の新交通サービス(MaaS事業)の実証実験も行いました。
高齢化の進行にともなって、自動車免許を返納してNPOタクシーを利用する人も増えて、『がんばらまいか佐久間』を象徴する事業として、定着しています。
まちの大きな病院にお見舞いに行く足、お出かけ支援としても利用できるように試行錯誤を行っています。

【2】NPO運営の店『いどばた』

地元の食材や数量限定の手打ちそば、多品種少量の惣菜を販売するお店です。
ほか地域の成功事例を参考にパンの提供にもチャレンジしています。

【3】佐久間新そばまつり
地元佐久間の休耕地で栽培したそばや、各地域自慢のそばを提供するイベントです。
季節の恒例行事として、県内外から多くの人が佐久間に集まります。
静岡文化芸術大学の学生が、そば作りに参画し、地域に前向きに関わってくれています。

新しい挑戦と、これからの地域貢献

「敬老会を運営する側の人も、老人になりつつあるんですよ(笑)。」

活動会員の減少やタクシー運転手の確保など苦労も多い中で、『がんばらまいか佐久間』は現在進行形でチャレンジを続けています。

「20年の活動で、設立当初の役割は一定果たせたのかも。これからは、また違った意味での地域貢献が必要になってきています。」

コロナ禍を経て、時代に合った柔軟な組織運営へと、存続のためにスリム化することも必要だと言います。
食・足の確保。雇用を生み出す基盤。続可能な活動のために、バイオマス発電の新事業にも意欲的です。

最後に、この町に移住し、活動を続ける原動力をあらためて河村さんに伺うと、

「水も緑も空気もキレイ。干渉と関心のバランスが居心地よいのが佐久間です。」

佐久間の魅力をそう表現してくれました。

 

 

【リンク】
▼特定非営利活動法人がんばらまいか佐久間 WEBサイト
http://npo-sakuma.net/

 

▼SHIZUOKA YELL STATION団体情報ページ
https://shizuoka-yellstation.com/group/d090

 

取材・文/JUNK itamura

新しい挑戦と、これからの地域貢献