交流・体験
西部
この土地で暮らし続けるために。NPO法人「かわね来風」奮闘記
活動団体
NPO法人かわね来風
活動場所
川根本町

静岡県榛原郡川根本町。豊かな自然に囲まれ、大井川の流れとともに人々が暮らすこの町は、山あいの趣ある田舎風景が色濃く残る場所です。

しかし、少子高齢化や過疎化が進み、限界集落(住民の半数以上が65歳以上で、共同体としての機能を果たせなくなりつつある集落)の課題に直面しています。

そんな状況の中、「自分たちがここで暮らし続けるために、今できることをしよう!」と立ち上がったのが、NPO法人「かわね来風(かわねらいふ)」です。

地域の魅力を発信しながら、町の人々のために必要なサービスをつくり、関係人口や移住希望者とのつながりを生み出すかわね来風の活動について、理事兼事務局長の浜谷友子さんに話を伺いました。

 

目次
1)限界集落の危機。「NPO法人かわね来風」設立の背景
2)海外ツアーと特産品で地域を元気にする仕組み
3)高齢者支援から児童クラブまで暮らしの困りごと解決
4)関係人口から定住へ。稼げる町と未来への種まき

 

限界集落の危機。NPO法人「かわね来風」設立の背景

NPO法人「かわね来風」は、2008年に設立されました。立ち上げから団体を牽引する浜谷さんは地元・川根出身で、もともと音楽教室の先生をしていました。

団体設立のきっかけを尋ねると、家族との死別を経験し、「自分の母が、最期まで楽しく暮らせる町にしたい」という想いから、地域の未来を考える活動がスタートしたそうです。

「田舎ならではのつながりで、子どもを近所の家に預けたり、雨が降れば洗濯を寄せてくれたり、これまで地域に助けられてきました」という浜谷さん。

「イベントだけではなく、地域の人が本当に必要としているサービスをつくる必要がある」と、三ツ星オートキャンプ場の運営をはじめ、次第に事業の幅を広げていきました。

現在は6名の専任スタッフが在籍し、地域住民や行政と協力しながら、観光・商品開発・高齢者支援・移住支援など多様な活動を展開しています。

 

限界集落の危機。NPO法人「かわね来風」設立の背景

海外ツアーと特産品で地域を元気にする仕組み

地域の魅力を発信し、経済を支える仕組みとして「かわね来風」が力を入れているのが、訪日外国人観光客向けツアーの受け入れや農泊(農村民泊)です。

アジア圏からのスタディツアーをはじめ、オーストラリアやカナダ、欧州など世界各国からの観光ツアーを年間60本以上受け入れています。

海外ツアーと特産品で地域を元気にする仕組み

団体客を受け入れるためには、一定数の宿泊施設が必要となるため、地元のおばあちゃんたちにも農泊の宿泊先として協力してもらい、町全体で観光客をもてなす体制を整えています。

外国語に堪能なスタッフがいるわけはないのですが、農家に滞在し、地元の食材を使った料理づくりやお茶・農業体験をする川根ならではのプログラムが好評です。

訪れた海外の方には、「天ぷら」や川根本町の郷土料理である「大根蕎麦」、蒟蒻芋から作る「手作りこんにゃく」が人気で、「東京や京都などの滞在先よりも、田舎の素朴な料理が一番美味しかった」という声もあるほどです。

また、海外ツアーの受け入れだけでなく、地域の資源を活かした特産品の開発にも取り組んでいます。

地元産の柚子を使った「ゆずビール」の開発や、ゆずパウダーの製造・販売、輸出(現在は、株式会社KAWANE SENSEとして独立)など、観光客にも魅力的な商品を生み出し、地域産業の活性化につなげています。

 

高齢者支援から児童クラブまで暮らしの困りごと解決

観光や特産品の開発は「稼げるまち」になるために重要ですが、それだけでは地域は存続し続けることができません。

住民が暮らしやすい環境をつくることが、川根本町を維持するうえで不可欠です。かわね来風は、高齢者支援や子ども向けのサービスも展開し、地域の生活を支えています。

 

高齢者支援から児童クラブまで暮らしの困りごと解決

「ママ宅プロジェクト」では、子育てママがこのまちで楽しい仲間と楽しい時間を作りだすためのきっかけをつくる活動として、ママ&子どもが町内のお年寄りに日用品や元気、笑顔を届けています。

「ちょいサポ」では、家の掃除・食事の調理・ゴミ出し・庭の手入れなど、日常の困りごとを地域内で助け合えるシステム を構築しています。

町からの委託を受け、小学生の放課後を預かる「児童クラブ」の運営も行っていて、共働き家庭を支援し、地域の子どもたちが安心して過ごせる環境を整えています。

 

関係人口から定住へ。稼げるまちと未来への種まき

「地域が存続するためにも、移住する人が暮らしやすいまちにしたい!」
今後の活動について、浜谷さんはそう言います。

川根本町の未来を考えるうえで、単に観光客を呼び込むのではなく、地域と継続的につながる関係人口を増やし、移住・定住へとつなげていくことを目指しています。(実際に、定年後に田舎での暮らしを希望する方や、海外からの移住者もあり、住まいの紹介や移住相談にも対応しているとのこと)

 

関係人口から定住へ。稼げるまちと未来への種まき

空き家バンクの登録サポートや地域おこし協力隊との連携、スポーツクラブ運営による地域のコミュニティづくりなど、「自分たちがここで暮らし続けるために、今できること」を多面的に推進するかわね来風。

「この町で暮らし続けたい!」「地域を未来へ残したい!」という意思が活動の源泉になり、「自分たちが川根で幸せな老後をむかえるためにも」と奮闘を続けています。

 

 

【リンク】
▼NPO法人「かわね来風」 WEBサイト
http://kawanelife.org/

 

▼SHIZUOKA YELL STATION団体情報ページ
NPO法人かわね来風 | 静岡県関係人口情報サイト SHIZUOKA YELL STATION

 

取材・文/JUNK itamura