事例紹介

事例紹介

一覧に戻る

お米づくりの楽しさと食の大切さを発信! 伊豆の田んぼで稲作体験

農山漁村
お米づくりの楽しさと食の大切さを発信! 伊豆の田んぼで稲作体験
活動団体 NPO法人伊豆・田んぼプロジェクト
活動場所 静岡県伊豆市

伊豆半島の田んぼを活用し、「誰もがお米をつくれるようにしよう!」「昔ながらの在来種を食べて、おいしく健康になろう!」と、無農薬・無化学肥料・無除草剤の自然栽培で、「朝日米」「亀の尾」「農林22号」というお米を育てている団体が、「NPO法人伊豆・田んぼプロジェクト」です。

今回は、伊豆・田んぼプロジェクトを運営する代表理事・武重光伯さんと副代表理事・まり子さんご夫妻にお話を伺いました。

現在はNPOの本拠地でもある自宅の庭で「ピザバスいしがまや」も営業する。

家業の飲食店では、何よりも「食の大切さ」を第一に

武重ご夫妻は、2000年に下田市で石窯・薪焼きピッツァ専門店「いしがまや」を開業し、2005年からは大型バスに石窯を積んだ移動販売に転向。8年前に現在の伊豆市に本拠地を移し、伊豆の真ん中から静岡県内各地に出張販売を続けてきました。

光伯さんとまり子さんは稲作にも関心があり、20年ほど前から農家さんから田んぼを借りてお米づくりに取り組んできたそうです。

「ピザバスいしがまや」の経営を通じて、お二人が痛感していたことは、「食の安全性、大切さをいかに伝えるか」ということでした。「自分たちが食べたくないものをお客様に提供することはできない」という信念のもと、食材を選び、ピザを焼き続けてきたといいます。
この「食への思い」とお米づくりの経験が、稲作体験会を開く活動へとつながります。

家業の飲食店では、何よりも「食の大切さ」を第一に
山あいの田んぼでの田植えの様子。この日は都内から大人ばかりが参加。

突然、カタチになった「お米づくりの楽しさを伝えたい」

2020年の春、伊豆半島の飲食店にも休業要請が…。

以前から、「都会で疲弊している人たちが稲作を体験すれば、心身ともに元気になれるのでは?」という思いを、ご自身も経験して持ち続けていたまり子さんは、フェイスブックのあるグループに「一緒にお米を育てませんか?」と呼びかけてみました。

3,000人ほどが参加するグループで、100人を超える人から「参加したい」「興味がある」「日程を教えて」などの反応があったそうです。田植え、草取り、稲刈りに2020年度は延べ70人を超える参加があり、毎回、楽しい時間を共有することができたといいます。

やがて、同年12月にNPO法人伊豆・田んぼプロジェクトを設立し、稲作体験会を開く活動を本格的に始めました。

突然、カタチになった「お米づくりの楽しさを伝えたい」
田植えに参加する子どもたち。田んぼには、オタマジャクシもいっぱい。

大人も子どもも、思いおもいに自然を満喫

稲作体験会には、関東圏から参加する家族連れが多いそうです。
「子どもは親の背中を見て育つ、とは、よく言ったものですね。親が田植えを楽しんでいるところに、洋服にドロを付けた子どもがママ、シャワーって。ママは、今はムリーって。シャワーっていう子どもと、ほったらかしにするママという対比もおもしろいですが、そのうち、子どもも恐る恐る田んぼに入って、オタマジャクシやアメンボを追いかけ始めるのです。もうドロだらけになってね。一瞬でたくましく育つ様子が、見ていて微笑ましいです」と楽しそうに語るまり子さん。

「子どもに田植えを体験させたいと言って参加する家族もいるのですが。親は、ちょっと過保護なのかな。こうして、ああして、と子どもに教えるのはいいけれど、子どもは苗よりカエルに惹かれるわけですよ。そうすると、その日は稲作体験ではなく自然観察会になっていく。そういう流れも大事にしています」とは光伯さん。

参加者の数だけエピソードが尽きず、武重さんご夫妻をはじめ、体験会をサポートする伊豆・田んぼプロジェクトのメンバーも、毎回、充実感を得ているそうです。
ジビエバーベキューやホタル鑑賞なども行い、参加者全員で楽しい時間を過ごしています。

大人も子どもも、思いおもいに自然を満喫
自分たちで「日本一小さな棚田」と呼ぶ棚田での天日干し。小さくても景色は圧巻。

稲作体験会は、食や健康について学び合う機会に

稲作体験会のお昼ごはんは、前年度に収穫したお米でむすんだおむすびと地元産の野菜たっぷりのお味噌汁、煮物の「一汁一菜」などを、みんなで田んぼの真ん中で頬張ります。

「子どもの健康を気遣う若いお母さんの参加も多いので、食事の時間には、私が学んだ食養について話したりもします。普段の生活に取り入れてほしいと思って…」。熱心に語るまり子さんの話には真剣に耳が傾けられ、また、参加者自身が取り入れている健康法なども披露されて、毎回、話は尽きないようです。

光伯さんも、「田んぼの中で体を動かしてお米を育てていると、私たちが生きる上で何が大事かという根本的なことが発見できるはず」と力を込めます。

稲作体験会は、食や健康について学び合う機会に
左から「農林22号」「朝日米」「亀の尾」。ネーミングも「土のなかの生きものと一緒に育った伊豆の、あさひ」など、ユニーク。

参加者との交流を地域の活性化につなげたい

「今後、NPOの運営メンバー、稲作体験の参加者、地域の協力者を増やしたい」とお二人は声を合わせます。「今後も相談は増えると思うので、多くの人の協力が必要になります」とも。

田舎暮らしや二拠点生活を始めて自給自足をしたいという人が増えている中で、NPO伊豆・田んぼプロジェクトでは、田舎暮らし体験や、おうち探しのサポートもしてくれるそうです。
実際に、伊豆へ移住してきた稲作体験会の参加者もいるそうです。

「移住や田舎暮らしをしたい人もそうですが、まずは気軽に参加してもらえれば」とまり子さんは話します。

稲作体験会を通じての参加者同士、あるいは参加者と地元の方々との交流は、やがては地域の活性化にもつながります。

田んぼの作業は、3月から種籾の準備が始まり、苗を育て、5月から6月にかけて田植えをします。夏の間は草ぬきをして、10月から稲刈り、天日干し、脱穀により自然の恵みを体感できます。

参加はいつからでもできるそうです。伊豆・田んぼプロジェクトのフェイスブックをチェックして、気軽に問い合わせしてみてください。

NPO法人伊豆・田んぼプロジェクト
https://m.facebook.com/people/伊豆田んぼプロジェクト/100071807335166/

(文・写真)静岡県関係人口ライター