事例紹介

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観光コンテンツ溢れる西伊豆で、教育旅行をプロデュース。(NPO法人 伊豆自然学校)

交流・体験
観光コンテンツ溢れる西伊豆で、教育旅行をプロデュース。(NPO法人 伊豆自然学校)
活動団体 NPO法人 伊豆自然学校
活動場所 静岡県西伊豆町

皆さんは「伊豆」と聞くと、何を思い浮かべますか。美しい自然に豊かな海の幸・山の幸、そしてバラエティに富んだ観光スポット。はい、すべて正解です!さらに言えば2018年にユネスコ世界ジオパークに認定された、静岡県、いや日本を代表する観光エリアなのです。

そんな伊豆の魅力を余すことなく発信しようと活動しているのが、今回ご紹介するNPO法人 伊豆自然学校。西伊豆の「自然」、「文化」、「歴史」そして「人」を満喫できる体験プログラムを提供しています。今回は理事長である鈴木達志さんに取り組みについてお話を伺おうと賀茂郡西伊豆町までやって来ました。

静岡県グリーン・ツーリズム協会の会長も務める鈴木さん。

日焼けしたお顔に爽やかで親しみやすい笑顔。見るからに伊豆の魅力伝道師の鈴木さん。ご自身も筋金入りのアウトドア・インストラクターでいらっしゃいます。早速、伊豆自然学校の具体的な活動について伺ってみました。

「わかりやすく言うと、体験プログラムの中間支援組織です。ここ伊豆には、豊かな自然を生かしたさまざまな体験プログラムがあります。それらの予約を受け付けたり、いくつかのプログラムを合わせてツアーを組んだりなどのサポート業務が私たちの役割です。たとえばダイビングやノルディックウォーキングが目的でいらした観光客の方たちに対して、それだけじゃないですよ。伊豆ならばこんなにおもしろい体験もできるんですよと、プラスαで楽しめるメニューを紹介する。また、地元の農業・漁業関係者で、観光客向けプログラムに興味があるのだけれど、やり方がわからないという方に対して、刹那的な収穫体験で終わるのではなく、継続的な教育体験にまで発展させるプログラムのご提案をしています」

ワークショップ「丸太時計作り」。

―確かに、伊豆半島はまるごと魅力的です。ひとつだけしか体験しないのはもったいないですね。ところで設立のきっかけはなんだったのでしょう。

「始まりは小学生の教育旅行。教育旅行とは、体験型の修学旅行です。NPOになる前は協議会として、民宿組合や旅館組合、役場、漁協、農協とともに、小学校の教育旅行をプランニングしていました。やがて、規模的に協議会の器では収まり切らなくなってしまったんです。やり方はいろいろあったのですが、教育が目的だったことからNPO法人を設立。以来、体験型教育旅行を行政などに働きかけています」

学校だけではなく、塾やファミリーなどからも問い合わせがあるという。それぞれのニーズをヒアリングし、ネットワークメンバーから鈴木さんが最適な体験メニューを組むのだそう。

「基本的なメニューは用意していますが、 例えば低学年が多いとか、見学をメインにしたいとか、あるいは工作も入れたいとか、皆さんいろいろなご要望をお持ちですので、西伊豆で体験できるさまざまなメニューを組み合わせてお応えできるようにしています。おもしろい活動は山ほどあるのですが、それらすべてをホームページでは紹介しきれないので、必要に応じて隠しメニュー的にご提供しているんですよ」

体験型修学旅行は原則二泊三日。西伊豆の自然から多くのことを学ぶ。

―伊豆は「楽しい。うれしい。おいしい」の宝庫。教育旅行を通じて西伊豆の魅力を知った人たちが、関係人口としてその後も定期的に訪れてくれそうですね。

「ありがたいことに、そういう方が本当に多いんです。例をあげると、幼稚園の頃から毎年来ていた子に、今年、就職しましたって言われて。どこに就職したのって聞いたら、宮古島のホテルですって。大好きな自然の中で仕事をしたいんだそうです。これはもう、インストラクター冥利につきますよね。彼は、初めての体験プログラムが『堂ヶ島トンボロ渡りと潮だまり』でした。トンボロを歩いて潮だまりの観察です。最初は魚にも生き物にも触れなかった子が、伊豆の自然に育まれて大きくなったと思うと感無量ですね。毎年、顔を見せに遊びに来てくれますよ。そういう人が結構いるんです」

参加してくれた人が、次回、友だちを連れてきてくれたり、あるいは家族同士が仲良くなって一緒に遊びに来てくれたりするとのこと。伊豆自然学校から広がるファン、つまり関係人口はどんどん大きな輪となって広がり、繋がっているようです。

 

「堂ヶ島トンボロ渡りと潮だまり」。干潮時、島まで歩いて渡ることができる。

―関係人口が増えて周りに変化はありましたか。

「伊豆に訪れてくれる方が増えれば、経済効果も含め地域の活性化に繋がりますよね。それから、こういう話もあるんですよ。メンバーである漁師さんが、『俺たちは一生懸命魚を捕っても、とくに褒められたことはない』って言うんです。それはそうですよね。ところが体験で子どもたちに捕り方を教えると、おじさんすごいねとか、こんなことができるんだとか、そういう反応が返ってくるんですって。『俺はそれがうれしいから、体験をやっているんだ』って言うんですよ。そして、活動に対してどんどん前向きになってくるんです。そういう良い変化はありますね。最初は、正直教えるのが面倒くさかったそうです。仕事場に他人が入り込むわけですからね。でも、やっぱり子どものキラキラした目を見ると、やってよかったなぁになって、それから、もっとやろうになるんですって」

関係人口が増えるメリットは、たくさんのお客様にご満足いただけて、かつ地域も盛り上がるというWin-Winの構図が描けることですね。最後に鈴木さんからちょっといいヒントをいただきました。

「僕はね、お客様をお送りするときに『さよなら』って言わないんです。『またね』って言うんですよ。それから、次の季節の話をするんです。春に来た人には、このきれいな海で夏また泳ぎたいでしょとか、次のシーズンの楽しみを思い描いてもらうようにするんですね。そうすることで、今度はどこに行こうかという話になったときに、そういえば伊豆ならその季節、こんな楽しみ方があるらしいよと、また候補にあげてもらえるじゃないですか。より多くの人にリピーター、関係人口になっていただけますよね」

小さな西伊豆ファンは、伊豆自然学校の大きな力。

実は神奈川県茅ヶ崎市出身の鈴木さん。西伊豆に魅了されここに拠点を移して20年経つそう。「地元の幼馴染から『お前は茅ヶ崎を裏切った』って言われるんですよ」とうれしそうに笑ったお顔が本当に楽しそうでした。

 

■NPO法人 伊豆自然学校
https://npo-izu.org/index.html