- 活動団体
- いとう・住もう 移住促進官民共同プロジェクトチーム
- 活動場所
- 静岡県伊東市
伊東市と連携した活動で、「2050年消滅可能性自治体」から脱却
「いとう・住もう移住促進官民共同プロジェクトチーム」(以下「いとう・住もうPT」)は、2020年6月に発足。現在、市議会議員、オブザーバー、正規メンバーを合わせた合計32人が、伊東市企画課とともに移住促進の活動に携わっています。座長の山本さんは、退職を機に2008年に伊東市に移住しました。少子高齢化が進む地域の現状に危機感を覚え、「いとう・住もうPT」発足と同時に、移住専門の窓口の設置や補助金制度の整備など、さまざまな移住政策を伊東市に提言してきました。
「いとう・住もうPT」の主な活動は、移住に関する様々な相談の対応です。静岡県や伊東市が実施する移住セミナーやフェアで、移住後の暮らしを紹介したり講師を務めたりします。また、市が主催している体験移住プログラムでは、希望者に市内を案内し、伊東市の魅力と“リアルな”伊東暮らし”の様子を伝え、不動産会社や工務店の紹介なども行います。
さらに、伊東市のコミュニティエフエム局「FMなぎさステーション」の番組「いとう移住応援団」では、山本さんはじめ、PTのメンバーがパーソナリティを務め情報発信をしています。
山本さん「伊東暮らしの一番の魅力は、海、山、緑といった自然が身近にあること。相談会では、気候や周囲の自然、自然災害の被害想定など、暮らしに直結する環境についてよく質問されます。保育園や幼稚園、学校などに関する質問・相談は行政にお任せします。移住者は首都圏からが中心ですが、近年は外国人も急速に増えています。伊東の緑の多さと海の美しさに驚き、魅了され、移住を決めるのです。私たちも、できる限り英語でも対応しています」。
伊東市への移住相談は、2019年には年間140件。その後、コロナ禍での移住ニーズの高まり、リモートワークの普及もあり、2022年以降400件を超え、それに伴い転入者も増加。子育て世代の移住も増え、2023年には、「2050年消滅可能性自治体」から脱却しました。

自然とともに暮らし、恵み豊かなフィールドを次世代に伝える
山本さんは、無農薬、無化成肥料の自然農法での野菜をつくり、ニホンミツバチの養蜂なども手がけています。今では仲間たちと情報交換をするネットワークも築いています。
また、旅する蝶と言われるアサギマダラが飛来するアサギマダラの里づくりは10年以上続けていて、他の団体や行政と協力しながら、森林の伐採やシカの食害で荒れてしまった山の斜面に植樹や花壇の整備にも従事。身近なところから自然を守り続けています。



「いとう・住もうPT」のオブザーバー、薄羽美江(うすばよしえ)さんは、8年前に伊東市に移住。「いとう・住もうPT」発足時から活動に参画しています。自身のプロデュース事業を営む傍ら、2021年に「ITO まなびや Station」を開設。ESD(持続可能な開発のための教育)の地域活動推進拠点として多彩なESDプログラム開発と運営を行い、アメリカの教育団体のサマースクールを伊東に誘致するなど、実績を積んでいます。
薄羽さん「伊東には東京にないものがあると実感して、国内外の子どもたちや首都圏の方たちを関係人口として呼び込むプログラムを企画、運営をしています。『ITOまなびやSTATION』では、自然農法を題材にした映画上映会などもPTと連携して開催し、仲間づくりを広げています。
また、伊東で夢を叶えたい、伊東ならではの環境で事業を広げたいという思いを持つ移住者の方々をラジオ番組でもご紹介し、『いとう・住もうPT』が新しい移住スタイルを先へ先へと牽引できればと努めています」。

伊東市の資源を活かすスタートアップや教育プログラムを誘致し、新産業の創出を目指す
山本さんは、JR伊東線や国道135号の複線化といった、地域のために必要な社会インフラの課題解決に向けた働きかけも続けています。また、農地法によってさまざまな手続きが必要で一般人が家庭菜園として気軽に利用できない耕作放棄地の利用拡大にも積極的です。
山本さん「移住者の多くが自然農法に興味を示し、農地を借りたいという要望が高まっています。土いじりは認知症予防にも効果的という研究結果もあるので、耕作放棄地を市民に広く開放して、ドイツのクラインガルテンのような制度をつくれないかと考えています」。
一方で「いとう・住もうPT」のメンバーは退職後の移住者が多く、70歳前後の方々によって活動が支えられています。そこで、今後は企業や教育機関なども巻き込み、若い世代の関係人口づくりに力を入れるため、スタートアップ部会を新設しました。
山本さん「伊東の海、山の自然を生かした魅力的な事業を創出するスタートアップ企業の誘致を目指します。例えば、海水魚や海藻の陸上養殖事業、そこから排出されるCO2を活用した野菜工場の導入計画などです。
また、海外を含めて先進的な取り組みを進めている大学や、農業や養蜂の研究・開発に特化している大学などと連携して、研究機関や地域での実証実験の誘致、地域の高校との連携も模索しています。
それから、伊東市内には、いわゆる“ジブリ的風景”が多く点在しているので、アニメビレッジの構想も練っています」。
薄羽さん「教育関連では、ユネスコ認定伊豆半島世界ジオパークである伊東ならではの豊かな自然、文化・歴史を次世代が受け継ぐことができるようにESD教育、UNESCOネットワークとPTが連携して、教育移住事業を実現できるよう準備を進めています」。
近年、伊東市に定住して地域のために新しいことにチャレンジしたいという人たちが集まり始めていると、山本さんは言います。外国人は、自然農など、安心・安全な新しい生活スタイルを求めて来るそうです。

移住や新たな事業展開などで伊東市に興味がある方は、まずは「いとう・住もうPT」と連携して、伊東市の魅力やリソースを体感してみてはいかがでしょうか。
【リンク】
いとう・住もう 移住促進官民共同プロジェクトチーム
取材・文/竹内友美

