
- 活動団体
- はちくぼ会
- 活動場所
- 伊豆市
伊豆半島のほぼ中央に位置する伊豆市湯ヶ島は、有名な浄蓮の滝や天城峠にほど近く、観光の拠点として知られています。川端康成や井上靖、梶井基次郎など多くの文豪に愛された、文学者ゆかりの地としても有名です。「伊豆の踊り子」も湯ヶ島温泉の宿で執筆されたんですよ。
今回お話を伺うのは、湯ヶ島地区茅野で環境保全活動を行う「はちくぼ会」。伊豆縦貫道を南へ進み、つづら折りの道を抜けた天城峠の手前に、会の連絡所「ファーマーズヒル」はありました。ここは石窯ピザ焼き体験もできるキャンプ場なのです。迎えてくれたのは、代表の山本宗男さん、そして「ファーマーズヒル」オーナーで、副代表の足立浩さんです。
「まずは会の概略をお話しますね」と山本さん。
「私たち『はちくぼ会』は、農業振興や環境保全など、地域貢献に寄与する部農会のメンバーが中心となってスタートしました。現在の会員数は18名。ほとんどが湯ヶ島の住人で、関係人口としては、地域おこし協力隊員の1名のみです。ただその人数では活動が難しいため、静岡大学や早稲田大学の学生さんにもお手伝いしてもらっています」

会の設立は2005年4月1日。農林水産省の「つなぐ棚田遺産」に認定された茅野の棚田をはじめ、茅野地区の保全と活性化を目的に発足しました。当時は、高齢化による農業離れが進み、休耕田が増え始めた時期だったといいます。それも含めてなんとかしようと有志が集まり、黒米や大豆の栽培・販売にも取り組みました。

―静岡大学や早稲田大学が関係人口として参加するきっかけを教えてください。
「茅野地区には静岡大学理学部のセミナーハウスがあります。ある時、お米を差し入れたことがきっかけで、先生から『はちくぼ会』の活動に学生とともに参加したいとお話がありました。以来、米作りや椎茸の菌打ち、鉢窪山の遊歩道整備を手伝ってもらうなど、もう15年ほどのお付き合いになります。里山は、理学部の学生さんにとって絶好の教材のようですね。毎年秋に交流会を開催するのですが、若いアイデアをいただけるのが本当にありがたいです」

―早稲田大学の関わり方は?
「社会科学部の学生がゼミで参加してくれています。こちらは10年くらいになりますね。『茅野をいかに良くするか』をテーマに、鳥獣班、観光班、そして食資源班に分かれ、地元住民とともに活動しています。秋に開催するマルシェでは、学生が考案・開発したわさびピクルスや天城わさびなどの農産物を販売します。東京では、静岡県産直マルシェで販売しているそうです。それ以外に、道の駅と連携したジビエメニューの開発なども行っていますね」と足立さん。

さらに山本さんからすてきなエピソードを伺いました。
「イベントを通じて、住民と学生の良い関係が築けていると思います。時々、OBも参加してくれるんですよ。今年から、早稲田OBの有志5名ほどが『はちくぼ会』の会員となり、東京支部的な組織を立ち上げてくれる予定です。卒業後も茅野と関わりをもってくれるのはうれしいですね」
田植えや稲狩りには静岡大学の学生が約20名、秋の感謝祭とマルシェには早稲田大学の学生10名ほどが参加してくれるそう。OBも応援に駆けつけます。
「感謝祭には静岡大学の学生も参加しますから、大規模な交流会になります。若い方が加わると活気が生まれ、いい意味で刺激を受けますね」
「それ以外に、農福連携にも取り組んでいます」と、足立さんが続けます。
農福連携とは、障がい者が農業に携わることで、自信や生きがいを持って社会参画を実現する取り組みのこと。担い手不足や従事者の高齢化が進む農業分野において、新たな働き手の確保に繋がると期待されています。
「伊豆市の月ヶ瀬地区にある福祉事業所と連携し、遊休農地を活用して麦ストローの生産・販売も共同で行っています。こちらもなかなか好評で、今度はじゃがいもを植えようかと盛り上がっているところです」
こうした取り組みが評価され、「はちくぼ会」は令和4年度『ふじのくに美しく品格のある邑づくり推進委員会』の選定により知事顕彰を、また令和6年度『ふじのくに地域共生大賞』最優秀賞を受賞しました。

―「はちくぼ会」に興味がある人はどうすればよいでしょう。
「実は最近も伊東市にお住まいの方から問い合わせがありました。かつて実施していたわさび田のオーナー制度に興味があるというお話でした。オーナー制度は現在行っていない旨をお伝えしたところ、それでは他にお手伝いできることはありませんか、ということでしたので次回の作業をご案内しました」と足立さん。「はちくぼ会」入会希望の方は、メール[izudenden@gmail.com]にてお問い合わせくださいとのことです。

―最後に山本代表に伺います。今後の課題について教えてください。
「会の存続に向けた後継者の育成です。そういう意味では、予定されている伊豆縦貫道の茅野インターチェンジ早期建設に期待しているんですよ。人の流れが活発になり、やがては定住人口の増加にも繋がるでしょう。魅力的なまちづくりを目指し、一緒になって茅野を盛り上げてくれる仲間を増やしたいというのがメンバー共通の想いです」
若い力とともに歩み続ける「はちくぼ会」。お二人の熱意溢れるお話を伺い、美しい自然と文化が調和するこの地が、これからもますます発展していくことを心から願っています。今回、クルマで取材に伺いましたが、東名・新東名からのアクセスもスムーズで、想像よりも遥かに近い印象を受けました。皆さんもぜひ、魅力たっぷりの茅野に遊びに来てくださいね。
■はちくぼ会
[連絡先]izudenden@gmail.com
取材・文/COMMONS.
