事例紹介
原点はゴミ拾い?!目的も儲けもなくていい。まずは人と人をつなげる“場”を創る
まちづくり活動団体 | NPOサプライズ |
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活動場所 | 静岡県 |
「場を創り、人をつなげ、事を成す」をミッションに掲げ、2008年に伊豆市天城で発足したNPOサプライズ。場のプロデュースや人材育成、地域のプラットフォーム構築など、活動内容は多岐にわたりますが、その原点は「ゴミ拾い」にあると言います。
NPOサプライズの代表を務める飯倉清太さんに、立ち上げの経緯や活動内容、注目のモデル事業についてお話を伺いました。
ゴミ拾いをきっかけにアイスクリームが売れ始めた?!
24歳のときに伊豆市天城へ移住して、アイスクリーム店を始めた飯倉さん。オープン当初は売れ行きが思わしくなく苦労しましたが、数年後には1日に何十万円も売り上げる大繁盛店に。そのきっかけとなったのが、ゴミ拾いだったそうです。
「どうしたら伊豆に人を呼び込めるか…。頭を悩ませていたとき、10年以上車でしか通ったことがなかった道のりを歩いてみようということになって。実際に歩いてみたら、ゴミがたくさん落ちていることに初めて気づいたんです」。
自身の動くスピードを変えたことで、これまで見えなかったものが見えてきたと言います。
「まずは足元からキレイにしようとゴミ拾いを始めました。おもてなしの一環ですよね。近隣施設の人たちにもお声がけをし、定期的に清掃活動を行うようになりました」。
ゴミ拾いをきっかけに生まれた人と人とのつながり。ゴミを拾っているだけではもったいないからと、活動範囲を広げるためにNPOサプライズを立ち上げます。「伊豆を驚かせる=サプライズ」と「伊豆に供給する=サプライ」の2つの想いを込めて、サプライズと名付けました。
「ゴミ拾いをしていたら、アイスクリームが売れるようになったんです。ゴミ拾いが新聞に取り上げられ徐々に僕らの活動が認知され始めると、観光客だけでなく地元の人もアイスクリームを食べに来てくれるようになりました。目先の儲けや目的よりも、人と人をつなぐ場づくりがやがてビジネスチャンスを生み出すことを、このとき身をもって学びましたね」。
地域・産業・教育機関をつなぐぬましんCOMPASS
NPOサプライズでは、地域貢献や地域活性化に取り組みたい企業と地域をマッチングする事業を行っています。
「場のプロデュースや人材育成、地域のプラットフォーム構築など、活動内容は多種多様です。何事も自分で経験してみないとわからない。経験と実績を積むために、仕事は断らないことをモットーにしています」と飯倉さん。
これまでも、経営アドバイスが受けられるオフィス付きの賃貸住宅「ドットツリー修善寺」や、子どもたちとプロのデザイナーがコラボして制作する伊豆の観光情報誌「KURURA(くるら)」など、地域活性化や人材育成を推進するプロジェクトを数多く手がけて、成功を収めてきたNPOサプライズ。
「2019年2月に、沼津信用金庫から『支店の合併で空きビルとなった建物の活用方法を一緒に考えてほしい』と依頼がありました。場を作って人をつなげる。シェアオフィスやコワーキングといったハコを作るのは簡単ですが、沼津駅周辺にそういった施設がすでに集積され、後発でフリーワーカーを集めるのは難しい。
そこでヒントを得たのがCOC+の発想です。COC+とは地方の大学群と、地域の自治体・企業やNPO、民間団体等が協働し、地域産業を自ら生み出す人材など地域を担う人材育成を推進するといった文部科学省による地方創生事業の施策ですが、これを沼津高専・沼津信用金庫・沼津市役所に置き換えてプランを熟考しました」。
1階には「みんなの図書館 さんかく沼津」とIT企業、2階には「TENTOぬまづ」としてシェアオフィスとコワーキングスペース、3階には、沼津高専のサテライトオフィスとワークショップスタジオを設置。
「1階から3階まで沼津高専という軸で創ろうと考えました。1階には沼津高専の同窓会会長が経営しているIT企業、2階のシェアオフィスには卒業生のベンチャー企業、3階は沼津高専のサテライトキャンパスとして利用してもらっています。学閥という軸で展開するこのモデルは、他でも展開できると確信しています」。
こうして人が集まる場や関わるきっかけづくりとなるプラットフォームとして、ぬましんCOMPASSが2020年7月にオープン。人と人の交流を通して、沼津高専の連携や沼津信用金庫のお客様と首都圏の副業人材とのマッチング、そしてビジネス関係人口の増大など新たなプロジェクトが生まれているようです。
人と人をつなげる機会を創り出す「COMPASSカフェ」
NPOサプライズは静岡県の関係人口創出・拡大モデル事業を活用し、沼津の「ぬましCOMPASS」と東京大手町のサードプレイス「3×3 Lab Future(サンサン ラボ フューチャー)」、横浜のシェアオフィス「mass・mass(マスマス)」の3拠点と連携して、人と人をつなげる「機会」を創り出しています。
モデル事業では、まずウェブセミナー「COMPASSカフェ」を実施。「COMPASSカフェ」とは、地域を豊かにするために活動する起業家やプロジェクトリーダーを招いて、その事業やプロジェクトを始めたきっかけをシェアし、新しいチャレンジをしたい人たちの背中を押すためのオンライントークイベントです。「COMPASSカフェ」では3拠点が連携し、企画調整や講師紹介、イベント告知を行いました。
「北海道十勝と世界をつなげるホテルヌプカ経営者の柏尾哲哉(かしおてつや)さんや、奈良を舞台にさまざまな場づくりやクリエイティブ業務に携わっている合同会社オフィスキャンプの坂本大祐(さかもとだいすけ)さんなど、毎回ユニークな講師をお呼びして集客を図っています。全国から数多くの参加者が集い、新しい関係人口を生み出していますね」。
これまで6回に渡って行われたライブ配信では再生総回数は2,869回、リーチした人(Facebook上で相手に表示された回数)の総数は10,147人にのぼっています。(2022年3月7日時点)。
「まずは、ぬましんCOMPASSの存在を知ってもらうことが重要。知らない場所にはなかなか足を運んでもらえないですからね。このウェブセミナーがぬましんCOMPASS利用のきっかけになればと目論んでいます」。
ウェブセミナー後の戦略としては、沼津・東京・横浜の3拠点の利用者が、各施設で自由に仕事ができるオフィスシェアリングの環境を整えました。これはCOMPASSカフェでつながった人に実際に沼津へ来てもらい、現地を体感してもらうことを狙っています。さらには次のフェーズとして、本モデル事業で得たノウハウを県内各地に拡大していくことを目指しています。
飯倉さんいわく、「沼津信用金庫の空き店舗を活用したぬましんCOMPASSは全国的にも先進的な取り組みで、今後もぬましんCOMPASSへの視察者が増えていくと思っています。積極的に受け入れを増やして、視察者もビジネス関係人口につなげていきたい。東京や横浜から沼津に一度お越しいただいて、そこから静岡の東海道沿線各地とつながる東海道沿線の連携プラットフォームづくりも視野に入れて展開していきます」と今後の抱負を語ってくれました。
▼3月4日報告会動画(NPOサプライズ)
▼NPOサプライズ
https://shizuoka-yellstation.com/group/d055
▼ぬましんCOMPASS(沼津信用金庫)
https://shizuoka-yellstation.com/company
▼mass・mass
▼3×3 Lab Future