事例紹介

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清水森林公園「やすらぎの森」から両河内エリアを元気に!

交流・体験
清水森林公園「やすらぎの森」から両河内エリアを元気に!
活動団体 特定非営利活動法人複合力
活動場所 静岡市清水区

静岡市清水区の中心市街地から車で約30分。豊かな自然が広がる静岡市の中山間地域「奥静岡」は“オクシズ”という愛称で呼ばれています。その中の一つ、両河内(りょうごうち)地区では、何代にもわたる“農”の営みによって、駿河湾に注ぐ興津川の源流域が守られ続けています。清水森林公園「やすらぎの森」を中心に両河内の魅力を発信し、多くの人が日常に“農”を取り入れて生活してもらいたいという想いで活動されているのが、NPO法人「複合力」理事長の加藤伸一郎さんです。神奈川県茅ケ崎市出身の加藤さんは35年前、自分が作ったものをすぐに消費者へ届けたい!と考え静岡県へ移住されました。その後、加藤さんが50歳の時に両河内エリアの農地再生をしていきたいという思いから地域のみなさんとNPO法人複合力を設立。お茶やタケノコ栽培が盛んな両河内地区は高齢化が進み、耕作放棄地も増えてしまったため、加藤さんは“農“の力を未来につなぐべく様々な活動を行っています。

まずは休耕地を再生させ、無農薬・無化学肥料栽培を推進し「西里体験農場」を創設。休耕地で田植えから稲刈り・脱穀までお米を手作り有機栽培する体験プログラムは毎年大人気!サポーター会員の皆さんと一緒に行う農業体験はお子さんを持つファミリー世帯の参加が8割、残りは年配のご夫婦での参加が多いそう。なんとリーピト率は7割も!「サポーター会員の皆さんと共に行う活動がとても力になっている」と加藤さんは満面の笑みで語っていました。
また最近では“幻の酒米”とも言われる「両河内亀の尾」を栽培し、NPO法人複合力と三和酒造がコラボレーションして完成した日本酒「臥龍梅 両河内亀の尾」が数量限定で販売されました。取材にうかがった日に田んぼへ足を運ぶと酒米の稲が高く伸びていてちょうど収穫間近でした。今年も“亀の尾”ならではの味わいを醸し出す清水の地酒の販売が今から楽しみです。

そして休耕地を再開墾して育てた“両河内産大麦”を使用して2017年に誕生したのが「両河内エール」です。大麦の香りと濃厚な味わいにきめ細かな泡が特徴の発泡酒“両河内エール”はレモングラスの爽やかな飲み口が人気を集めています。「休耕田を利用して酒米の生産量を増やし、裏作で大麦の生産も拡大したい。そして将来的には工場を建設し地ビールを生産したい!」とキラキラ瞳を輝かせて話す加藤さん。そんな加藤さんの想いが市民のみなさんの心を動かし、両河内のみなさんの力で育てたお酒なのだと実感しました。また、この麦はお盆の精霊流しの際には船の材料として用いられ、静岡農業高校では麦ストローを活用し海洋プラスチックごみ問題を提起する「シズオカ ストロープロジェクト」にも利用されているそうです。まさに、“農”の力を未来へつなぐプロジェクトだと再確認させられました。

NPO複合力の活動拠点として2014年には多機能型実験ショップ「como(コモ)」を創設。地元の食材を使った森のジェラートショップもオープンし、土日は多くの皆さんが集う憩いの場となっています。お茶、みかん、ブルーベリーなど6種類のフレーバーがあり、看板娘“ヤギのさっちゃん”がお出迎えしてくれますよ。そしてベンチに腰掛けていると、ヤギやニワトリ、さらに野鳥の鳴き声も聞こえ、大自然に囲まれていただくジェラートの味は格別です。2015年には「como」にビジターセンター機能も併設し、森林公園「やすらぎの森」の環境と生物保全活動を本格的にスタートしました。さらに「como」のすぐ隣には“いつでも体験工房”を新設。地元特産のお茶や田んぼに生えてくる草などを原料に草木染めグループ“dye dey”が活動を開始し、ワークショップも開催しています。

やすらぎの森からオクシズ両河内を元気にしたい!という思いで移住され、これまで活動されてきた加藤さん。農業を次世代につなぐため両河内エリアの自然環境を守り、育めるよう数々のプロジェクトを仕掛けてこられた加藤さんの姿に感銘し、多くの市民のみなさんの力が合わさって今の活動へと繋がっているのだと感じました。「これからもやすらぎの森に来るきっかけを作って、交流人口を増やしていきたい。そして豊かな土・水・太陽の恵みで新たな六次化農業を育てるのが目標だ!」と笑顔で話す加藤さん。きっと加藤さんの温かいお人柄に魅了され、色んな人やモノと融合し、様々な化学反応を起こしていくのだろうなと、私もこれからの活動への期待に胸を膨らませました。

ぜひ、みなさんも懐かしい気持ちになれる清水森林公園「やすらぎの森」へ出かけてみませんか?穏やかなお人柄の加藤さんと可愛いヤギのさっちゃんが両河内の魅力をたくさん教えてくれますよ。

◇マリコの取材こぼれ話
・やすらぎの森「西里おもしろ不思議散策MAP」を持って散策すべし!
(カエル王国MAPは必見!マスターすればカエル博士になれるかも♪)

(文・写真)静岡県関係人口ライター