事例紹介

県西部に位置する浜松市はモノづくりや音楽のまちとして親しまれ、豊かな自然・歴史に触れられるエリア。そんな浜松市で長年、障がいのある人と一緒に楽しめるコンサートを企画・運営をされているのが理事長、鈴木恵子さんです。浜松市内の公立中学校で、音楽教員として10年間勤務されていた時、知的障がいのある方へ音楽を通して余暇支援をしていきたい！と思ったことが活動をはじめるきっかけだったそうです。「誰もが暮らしやすい街となるよう、心のユニバーサルデザインの社会を目指す」という思いからスタートした認定NPO法人魅惑的倶楽部（エキゾチッククラブ）は今年11月で21年目を迎えます。様々な人や団体との交流を深めていき、レッドリボンプロジェクトや東北支援など活動の輪が年々広がってきました。

なかでも当初から力を入れて取り組んでいるのが、障がいのある人と一緒に楽しめるコンサート“マジックハートコンサート”です。「すべての人に開かれた環境」をテーマに2ヶ月に1度のペースで開催されているコンサートで、障害のあるなしにかかわらず、歩くことができない方や慣れない建物に入るのが怖い方、飛んだり跳ねたりしたい方など色んな方が参加しています。会場となるサーラ音楽ホールの多目的室は階段や段差がなく、大きな窓から明るく陽が差す開放的な空間が広がっていました。この日は卒業シーズンということで、浜松市浜松手をつなぐ育成会・イベント部会も共催で、卒業お祝い式典が同時開催。“マジックハートコンサート・卒業・進級おめでとう！”と題して魅惑的倶楽部のメンバーらが、軽快な卒業ソングやダンスなどを披露し、約6０人の来場者を楽しませていました。

オープニングは鈴木さんはじめ魅惑的倶楽部のメンバーによるディズニーのパラパラダンスからスタートし、園児の衣装を着て「上を向いて歩こう」や「世界に一つだけの花」などを披露しました。手話を交えて歌った「虹」では、観客の多くが一緒に手話をし、会場全体が温かな雰囲気に包まれる一幕も。そしてゲストのトランペットユニット「bulan」のみなさんによる軽快なトランペット演奏も行われ、会場は笑顔で溢れていました。

また絵本の読み聞かせやマジックショーでは鈴木さん自ら渾身のマジックを披露され、子どもから大人まで魅了される圧巻のパフォーマンス！さらに卒業お祝い式典では地元企業による花束贈呈や飲料水のプレゼントもあり、地域と一緒に子どもたちの卒業をお祝いしようという思いが伝わってきました。

障がいのある子も地域みんなで育てて居場所を作っていきたい！という思いから鈴木さんが浜松市で活動を続けて約25年。障がいのある子の多くは、幼稚園から高校を卒業するまで約15年間、自分の住んでいる地域を離れ遠くのエリアまで通学しています。そのため、浜松市などで行っている地域単位の成人式には参加しにくく、また受け入れも困難であるのが現状です。鈴木さんはご家族との交流をしていくなかで、「障がいのある人のための成人式」に関する要望が多く寄せられたことをきっかけに、『魅惑的生人四季〜障がいのある人とともに祝う成人式〜』を企画し、毎年1月の成人の日に実施してきました。

マジックハートコンサートをはじめ様々な活動を通して「長年続けてきたおかげで、最近では地域のみなさんが待ってくれているな！と感じる」と笑顔で話す鈴木さん。核家族の増加で地域の人と関わりが減ってきている今こそ、自分の地域だけでなくもう少し広い視野を持って社会を見ることの大切さを感じてもらいたいと熱い思いを語ってくれました。

障がいのある子もない子も一緒に暮らしているんだ！ということを感じてもらいたいという願いから、中高生のボランティアも積極的に受け付けています。さらにボランティアで参加した学生たちが将来的にまた地元に戻って活動してもらえるよう、あんな大人になりたい！と感じてもらうための人材育成の場も兼ねているとも話していました。

今後も心のユニバーサルデザインの社会を目指して、明るくパワフルな鈴木さんの活動はさらに広がっていきます。最近では掛川や御前崎まで出張コンサートも行っているそう。魅惑的倶楽部のみなさんの歌声はどこか懐かしい気持ちを感じさせ、気付いたらつい一緒に踊ってしまうダンスパフォーマンスは一度見ると虜になること間違いなし！鈴木さんをはじめまさに魅惑的なメンバーのみなさんが奏でる“マジックハートコンサート”の次回開催日は4月１６日（日）です。立って見るもよし！座って口ずさむもよし！マジックハートコンサートを楽しむスタイルに縛りはありません！世代を超えて音楽を存分に楽しめる空間と笑顔がそこには広がっていました。ぜひみなさんも鈴木さんと一緒に、音楽でひとつにつながる特別なひと時を過ごしてみませんか？

認定NPO法人魅惑的倶楽部（エキゾチッククラブ）

https://exoticclub.jimdofree.com/

（文・写真）静岡県関係人口ライター