事例紹介

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楽しい!だけでは終わらない
エコエデュの環境教育

子育て・教育
楽しい!だけでは終わらない<br>エコエデュの環境教育
活動団体 認定NPO法人しずおか環境教育研究会【エコエデュ】

「ほらここ、みてみて!冬眠中のカエルさんがいるよ」
微動だにせずじっと春の訪れを待つカエルを生まれて初めてみるこどもたち。背中をつんつん。「ぷにぷにしてお餅みたい!」大喜びする様子を笑顔で見守る母親たち。親子が参加しているのは認定NPO法人しずおか環境教育研究会(略称エコエデュ)が主催の環境教育プログラム「里山のかやねずみ」(通称かやっこ)です。ありのままの姿でいられるようにと育児経験と里山知識が豊富なスタッフがサポートにあたります。こどもは「自由」を存分に楽しみ、母親はリラックスしながらわが子の新たな一面を見つけられる非日常的で特別な場所。楽しい!だけでは終わらないエコエデュの環境教育を体験取材しました。

山本由加理事長(写真提供:エコエデュ)

エコエデュについて
エコエデュは0歳から小学生を対象とした プログラ ムを主催 する他、行政 ・教育機関・企業からの事業 も受託 しています 。随時参加者を募集しており、体験参加もできます。参加者の中には活動に賛同し運営スタッフになるケースも。山本由加理事長は「自然が大好きよりも現実社会の中で自分らしく、主体的かつ探究的に生きていける人材を育成した い」 と話します。

活動場所は里山
こどもたちの学び舎「糀ヶ谷(こうじがや)」はJR静岡駅から車で約20分。日本平に近い県有林にあります。大通りから一本入った住宅地を進むと次第に景色が山道へと移り変わり、細道を進む先に集合場所の雑木林に囲まれた砂利の駐車場があります。ここを始点とし、山の反対側までが活動場所。参加者はお散歩感覚で歩みを進め、道中の草木や生き物に触れ合いながら里山を散策します。

かやっこ① 主体性が育まれる環境
「かやっこ」は毎週火曜、木曜開催で0から3歳の未就園児の親子対象プログラムです。時間は10時から13時まで。参加者全員が輪となり「はじまりのあいさつ」から1日が始まります。中には脱走するこどもがちらほら。しかし母親はすぐに輪に戻そうとはしません。行きたいところへ行き、触りたいものにさわる「自由」が認められる。プログラム中はスタッフがこどもの遊びを見てまわり「それ面白いね!」と積極的に声を掛けます。

以前私が体験参加した時の事。息子ははじめ大泣きしていました。みんなは体操をしているのに…と困り果てている私にスタッフの一人が「慎重派なのよ。今は周りを観察しているだけ、直に落ち着くから大丈夫」。その言葉通り、水辺までやってくると息子は半べそをかきながら手をちゃぽん。機嫌が直ると、帰路に就く前に寝てしまうほど山遊びを堪能しました。外出先でこどもが泣くと焦りが募る一方ですが「今は泣かせてあげればいいんだ」と教えてもらい安心できました。こうした経験の積み重ねで緊張がほぐれ母親の心にゆとりが生まれる。こどもが安心して主体性を磨くことにもつながります。

かやっこ② 支え合う子育てコミニティ
「かやっこ」は母親にとってもかけがえのない時間です。生後6か月になる次女を前抱きし、でこぼこ道を歩く長女の後を追う母親。「1人でこども2人をみるよりここに連れてきたほうが楽」。姉妹の兄は「かやっこ」を卒業し、園児向けプログラムに進学中。「いまは姉妹を連れて毎週参加しています」と話す母親からは、エコエデュへの信頼感が伝わります。スタッフの大野知子さんも過去の参加者の一人。「こどもが自ら育とうとする過程を母親たちが一緒に見守り、一緒に成長していくコミュニティになっている。自主保育やサークルとの違いは、我々スタッフの存在。自然の中で幼いこどもが遊ぶためのサポート、こども同士のトラブルや子育て中の悩み相談などに第三者として、また『かやっこ』の先輩ママとして共感し、寄り添える」と振り返ります。

大野知子さん(写真提供:エコエデュ)

参加後多くの親が印象的だったと話すのが、目を輝かせ生き生きと遊ぶ我が子の表情。周りの目や、こどもの安全確保を優先するあまり緊張と隣り合わせの日々。いつもなら止めに入るこどもの行動も一緒に見守ってくれる人がいる安心感からここでは一緒にやってみる。するとこどもは普段見せない表情を見せます。毎週参加の親子も、初参加の親子もすぐに打ち解け合い、育児中の不安や孤独に共感する。支え合っていると実感できるのも“かやっこコミニティ”ならではです。

エコエデュが教えてくれる「自然との共存」
大野さんは「幼いころから里山に入っているこどもの行動の変化が頼もしい」と話します。かやっこを経て園児向けプログラムに“進学”したこども達と冬苺を取りに出掛けた時「森の動物や後から来た人のために採りすぎない」という約束を幼い時に守れずたくさん食べていた子が「森の動物に残しておかないと。ちっちゃい時からいっぱい貰ったからもういいの」と遠慮したそうです。長く自然と関わる中で、自然を思いやる行動力が育まれます。

現在静岡市内の12歳以下人口の4%に当たるこどもがエコエデュの取組みに参加しています。山本理事長は「エコエデュを通じて、環境教育に触れるこどもの数が10%に増えれば静岡において、人と自然の関係が変わってくるのではないか」と今後も新事業を展開する意欲を多方面に示していきたいと話します。

 

最後に
県土の3分の2が森林に覆われた静岡県。エコエデュの環境教育は身近な森を舞台に自然と真剣に向き合い挑戦する大切さを教えています。遊びながらそれを学ぶこども、共に成長する親、親子が安心して活動できる環境づくりに努めるスタッフ、すべてが必要不可欠な存在です。みなさんもこども達と遊びながら学んで森の未来を次世代に繋ぐ一員になりませんか。

※本記事は令和3年3月11日に取材したものです。

 

(文・写真 静岡県関係人口ライター)