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「クリエイティブ×場づくり」で港町・焼津に新たなつながりを生み出す株式会社ナイン(株式会社ナイン)
活動団体
株式会社ナイン
活動場所
焼津市

「らしく生きて、ちゃんと稼ぐ。」

東京に本社を置きながら、静岡県焼津市をフィールドに、クリエイティブとまちづくりを融合させたユニークな事業を展開する株式会社ナイン(以下NINE)。

WEBサイトや映像の制作をメインに事業を展開する同社の会社情報には、そんなキャッチコピーが打ち出されています。

NINEが考える、地域経済のカタチ『らしさエコノミー』とは何か?

地域活性化の鍵となる関係人口の創出が注目される中、デジタルとクリエイターの力で、地域の「らしさ」を磨くことをモットーに活動する、NINE代表取締役の渋谷太郎さんに話を伺いました。

 

目次
1)「らしさで自走する地域経済」をつくりたい
2)焼津ナインがチームで活動する理由
3)冬をあたためる海のまちのクリスマスマーケット
4)クリエイティブを軸にしたコミュニティづくり

 

「らしさで自走する地域経済」をつくりたい

NINEが提案する『らしさエコノミー』という思想は、

「地域に住む私たちが、どのように生きていくと幸せになれるのか?」
という問いに対する、ひとつの答えとして生まれたと渋谷さんは言います。

1.「らしさ」に価値をつける
2.「らしさ」で経済的に自走する

3.「らしく」生きる人口を増やす

という3つがポイントです。

地域の個性を活かしながらお金と交換できる仕組みをつくること、経済的に自走できること、そして「らしく生きたい」と共感する人々が集まり、関わりを持ち続ける場をつくること。

その先に、地域に新たな経済圏が根付くことを見据え、NINEは活動しています。

 

「らしさで自走する地域経済」をつくりたい

焼津ナインがチームで活動する理由

『らしさエコノミー』の実現に向けて、NINEはどのような活動を行っているのでしょうか。

まず、社名である『ナイン』の由来を渋谷さんに尋ねると
「野球チームや部活のようにワイワイと活気のある会社にしたいと名づけました!」
とのこと。渋谷さん自身も中学時代は野球部だったそうです。

会社のロゴも野球のホームベース型で、焼津駅前商店街の空き店舗をリノベーションしたコワーキングスペース『Homebase YAIZU(ホームベース焼津)』やカフェ&コミュニティスペース『PLAY BALL! CAFE(プレイボールカフェ)』など、野球にちなんだネーミングの場づくりを行っています。

会社は、東京(大崎)と焼津にオフィスがあり、官民協働で地方創生を支援する会社グループにも属しているため、地域や行政の課題解決に取り組む仕事(デジタルマーケティング・クリエイティブ支援・イベント企画など)も少なくありません。

東京のスタッフが焼津を訪れたり、焼津から県外の仕事へ向かったり。仕事をきっかけに焼津に移住し、パートナーを見つけたスタッフもいるそうです。

渋谷さんは、野球のように色々なポジションで個人の得意を活かしあいながら、成果を生み出す仕事に魅力を感じるそうで
「チームで仕事を行うことで、ひとりで行う仕事の枠を超えることが出来る」
と、言います。

焼津ナインがチームで活動する理由
『焼津マリンアージュチョコレート』PLAY BALL! CAFEで生まれた生産者さんとの繋がりから、商品の企画・開発サポート、パッケージデザインをNINEが担当。試食イベントを開催し、メディアにも取り上げられました。

冬をあたためる海のまちのクリスマスマーケット

NINEは、社員だけでなくワーキングスペースやコミュニティスペースの運営を通じてつながった地域のプレイヤーとも活動の輪を広げています。

焼津市でクリスマスシーズンに開催するマーケット『Pikkujoulu(ピックヨウル)』はその代表です。

 

冬をあたためる海のまちのクリスマスマーケット

地元のカフェオーナーらとのつながりから生まれたこのイベントは、北欧の小さなクリスマスのような世界観をつくることで、若い人たちがオシャレで心地よいと感じる空間を目指しました。飲食や物販に加え、音楽ライブも楽しめます。

約100店舗の店舗が集まる2日間のイベントには、18,000人が来場し、地域の新しい風物詩として定着しはじめています。

 

イベントだけでなく、地域のプレイヤーとのつながりから、焼津駅前商店街で『meguru(めぐる)』というポップアップストアも展開し、日替わりで美味しいもの、ステキな作品、時間を提供する試みがはじまっています。

 

クリエイティブを軸にしたコミュニティづくり

クリエイティブを軸にしたコミュニティづくり

港町の風情や、昭和の趣を今に残す商店街の雰囲気など、焼津にポテンシャルを感じ、渋谷さん自身の生活も静岡で活動する割合がコロナ禍以降増えているそうです。

「元々ある地元の良さに、デジタルやクリエイティブの新しいエッセンスを付加することで、もっとまちを面白くできるはず。」

地域の場づくりでは、ハブの役割を担うスタッフがその場所に居ることが価値となります。多拠点での活動に「顔がみえにくい」と言われてしまったことも過去にあったそうです。
必ずしも順調に進むことばかりではありませんが、いろんな人が集まる中で、価値観や利害関係を調整しながら、「焼津らしさ」を生かした自走する地域経済づくりに取り組んでいます。

「まちづくりはボランティアではなく、仕事を通じてこそ強固な関係性が築けると思っています。今後は、県外の仕事をまとめて地元の人たちと一緒にやりたい。」

商店街で主体性を持って何かをはじめてみたい人と、仕事を軸にしたつながりを作ることで、他の地域でも再現可能な事例を生み出したいと渋谷さんは言います。

クリエイティブスキルを活かしながら、焼津を発信源に『らしさエコノミー』が全国へ広がる未来を描いています。

【リンク】

▼株式会社ナイン(NINE) WEBサイト
https://nine.sc/

▼SHIZUOKA YELL STATION団体情報ページ
https://shizuoka-yellstation.com/group/d104

 

取材・文/JUNK itamura