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共創型コミュニティレジデンス「the Port kakegawa」をベースに、新しいまちづくりに挑む(合同会社Brass Entertainment Company)

まちづくり
共創型コミュニティレジデンス「the Port kakegawa」をベースに、新しいまちづくりに挑む(合同会社Brass Entertainment Company)
活動団体 合同会社Brass Entertainment Company
活動場所 静岡県掛川市

城下町の風情が残る掛川市街地で、ゲストハウス、コミュニティスペース、ワークスペースの複合施設「the Port kakegawa(ポートカケガワ)」を運営している合同会社Brass Entertainment Company。代表の長濱裕作さんは、地元に人を呼び込みながら、他地域との関係性も築き、互いに連携、拡張していくまちづくりに挑戦しています。

より良い子育て環境を求めて掛川市にUターン。地域との接点を持ち、まちづくり活動を開始

より良い子育て環境を求めていた長濱さん。故郷掛川市にある1棟の古民家に出合い、Uターンしました。そして、子育てによって生まれる地域とのつながりや人との接点が増えるにつれ、地元への思い入れも強くなったそうです。

長濱さん「大学を卒業して就いた職業は転勤があり、その土地のいいところを見つけて楽しんだりはしましたが、いずれは離れてしまうと思うと、地域に入り込むようなまちづくりに参加するのは、どこか無責任な気がしていました。でも掛川市に戻ることで、自分たちが住む場所、子どもたちが未来も住むであろう場所をより良くしていきたいと、長い時間軸で地域との関わりを考えられるようになり、自然とまちづくりを意識し始めました」。

その後、本業のフリーランスライターとしての仕事とは別に、まちづくりをメイン事業とする合同会社Brass Entertainment Companyを設立。元旅館の建物をリノベーションした共創型コミュニティレジデンス「the Port kakegawa(ポートカケガワ)」を、地域の起業家やフリーランス、学生たちと一緒につくり上げ、運営。さらにポートカケガワが提供する事業の開発を行っています。

長濱さん「Portには『港』と、デジタル機器の情報送受信口『ポート』のふたつの意味を込めました。さまざまな人がここを訪れ、エネルギーを蓄えて新たなチャレンジをするため旅立っていく場所に、そしてここでいろいろな人やコトと繋がることで、出会いや気づきがアップデートできる場所に、というメッセージを込めています。
そもそもの原点は、人が集い交流することで新たな価値観が生まれる環境を地域の子どもたちに残したいという想い。大人たちの多様な働き方を見ることで将来の可能性が広がる体験を、ポートカケガワでしてほしいと思っています」。

より良い子育て環境を求めて掛川市にUターン。地域との接点を持ち、まちづくり活動を開始
▲ポートカケガワの外観。かつて旅館だった建物の2Fをリノベーションした施設
▲コミュニティスペース。ワークショップや講座など、さまざまなイベントを開催できる

共創型の場づくりを通じたまちづくりで、目指すのは豊かな地方都市

「ポートカケガワ」のコンセプトは【「学び・遊び・暮らし」を通じて生涯学習&報徳思想を実践】です。1971年、全国に先駆けて生涯学習都市宣言を行った掛川市の地域性も反映されています。長濱さんは、ポートカケガワを地域の人たちに活用してもらうため、さまざまなプロジェクトを展開しています。そのひとつが、共同参画型まちづくりプロジェクト「まちづくり実験室」(掛川市後援)です。

これは、つながり・気づき・学びをコンセプトにした、全国フリーランス共創コミュニティ「新しい働き方LAB」の「個人の新しい働き方を実証実験する研究員制度」プログラムの一環で、2023年6月からの半年間、【共創型の場づくりを通じて、地方のまちを豊かにすることはできるのか?】を実験テーマに掲げ、全国から活動への参加者を募り、まちの活性化に挑戦しました。

長濱さん「掛川市内外から多様な働き方、価値観を持つ人たちが集まることは、ポートカケガワの方向性にマッチしているので、このプログラムを活用し、外からのフリーランスの力を借りて、ポートカケガワ発のまちづくりを拡張、ブーストさせていきたいと考えました」。

取り組みでは「アート」「ゲーム」「事業創出」「コミュニティ」「コンテンツ発信」「ゲストハウス」の6つの部門を設定。地元のアートイベントや商店街と連携したイベント開催、ポートカケガワのゲストハウスエリアオープンの準備などに取り組みました。「豊か」を図る指標として定めた、エコノミー(経済効果)、リレーション(関係人口)、エピソード(想いの発信)の目標値もクリア。さらに、数値だけではない効果も実感しました。

長濱さん「地域でユニークな取り組みをしている人たちとのつながりが増えました。また、参加した研究員の中には、移住を前提に東京と掛川の二拠点生活を始めた人や、掛川市の地域おこし協力隊に就任した人もいます。移住先の候補にしている人や、今年度の取り組みに継続参加を希望する人もいて、関係人口の創出、定着にも貢献できているのかなと思います」。

共創型の場づくりを通じたまちづくりで、目指すのは豊かな地方都市
▲まちづくり実験室の活動は基本的にオンラインを通じて行われる
▲プロジェクトメンバーが集まり、ZINE作りワークショップを開催

次のステップは、地域の人が喜ぶコンテンツづくり。積極的に他地域ともつながり人の交流を促す

手応えを感じた実験期間を終え、2024年6月から、再び「まちづくり実験室」プロジェクトがスタート。まちの図書室(本づくり部門)、まちのお土産(商品開発部門)、まちのアート(地域芸術祭部門)の3つの部門が【まちの拠点から、ヒトが喜ぶコト・モノは開発できるのか?〜まちの図書室、まちのお土産、まちのアートを作ろう〜】をテーマに活動します。

長濱さん「まちづくり実験室自体は営利を求めるプロジェクトではありませんが、前回の実験期間で、掛川の活性化や、ポートカケガワの独自事業を推進するため企業交流会や、社会人研修のプログラムを提案し、事業化の目途が立ったものもあります。最近では、海外から10人以上が集まる農業系の研修でポートカケガワを利用したいという相談もいただきました。地元の人が、外から何かを持ち込む時の受け皿として、ポートカケガワが認知され、選ばれているのだと実感できます。
また、地元商店街との新たな接点が生まれたので、今後は、掛川市全体にもっと影響を与えられるような活動をしていきたいです。
一方で、自分たちの地域にフォーカスしすぎると、視野が広がらない懸念もあります。外の人たちと連携することでいろいろな可能性が広がることがわかったので、全国の他地域で活動している人や、そのまちと共創できるよう、これからも外にも拡張して新しいことを生み出していきたいです」。

次のステップは、地域の人が喜ぶコンテンツづくり。積極的に他地域ともつながり人の交流を促す
▲約半年のプロジェクトを通じて、たくさんの“豊かさ”がポートカケガワから生まれた

「まちづくり実験室」の活動情報はSNSを通じて常に発信しています。誰もが参加できるイベントもあるので、「まちづくりの活動に興味がある」「いずれ自分の地元でまちづくりをしたい」という人は、ぜひチェックしてみてください。

 

【リンク】

合同会社Brass Entertainment Company代表 長濱裕作
https://x.com/hamalandspace

the Port kakegawa(ポートカケガワ)
https://www.instagram.com/theportkakegawa/
https://x.com/theportkakegawa

 

(文・写真)静岡県関係人口ライター