事例紹介

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沼津から県東部に広げる「アソビゴコロ」を大切にした空き家再生プロジェクト

まちづくり
沼津から県東部に広げる「アソビゴコロ」を大切にした空き家再生プロジェクト
活動団体 日の出企画

沼津市のコワーキングスペース「Antique door(アンティーク ドア)」(沼津市大岡)を拠点に、静岡県東部の移住定住支援、創業支援、空き家対策の活動を行っているのが、日の出企画の山田知弘さんです。「Antique doorのような拠点となるスペースを、空き家を活用して静岡県東部エリアで、各市に1軒作っていきたいです。また、作るときから学生や企業を巻き込みながら、『アソビゴコロ』を大切して、関わった人の思い入れのあるスペースを形にしていくようにしています。」と、人と人との交流を大事にした取り組みをしている山田さん。
そんな山田さんの活動について、詳しくお伺いしました。

山田さんは三島市の出身。県外の大学に進学しますが「高校まで特に将来やりたいと思うことはなく、経営学部を選択したけど、自分もサラリーマンになると思っていました。」と山田さん。大学生の時に、インテリアや建築デザインの雑誌を見ることが好きで、「建築関係の仕事に就こうと思いました。ただ、専攻は建築系の学部ではなかったので、まずは大手住宅メーカーの営業職に就き、ゆくゆく建築の資格を取得しようと考えました。」と、卒業後の進路を考えたそうです。入社後、すぐには営業実績が出なかったものの、3年目から成果が表れ、4年目には営業成績で表彰を受けるほどだったそう。
その後、5年で退職して、取得したファイナンシャルプランナーの資格を生かし、入所した税理士事務所で住宅相談や相続相談を受ける役割を担います。2012年に独立してファイナンシャルプランナー事務所「日の出企画」を開業、2016年に現在の「Antique door」が入るビルを購入して大家となり、コワーキングスペースを開業するわけですが、「これまでの住宅営業や不動産、相続や空き家相談の経験が、結果として今やっていることに生きています。」と山田さんは言います。また、「自分にとってもボランティアにならず、仕事の中で社会問題の解決につながっています。セミナーでこれまでの実績や経験、知識を話すだけでなく、参加者が完結するところまで導くことを大切にしています。」と笑顔で話します。

「Antique door」の1階は、同スペースを立ち上げる時に開業に関わったカフェが入居しています。2階は、コワーキングとイベントスペースになっており、白い壁に木材や観葉植物に囲まれたおしゃれで温かな雰囲気の空間になっています。山田さんが大切にしている「参加者が完結するところまで導く」こと。実際に昨年は、山田さんが行政と連携して開催した講座の参加者などから、14名が独立や法人設立に至ったそうです。「Antique door」に関しても、「最初の事業スタートはこの場所からだとしても、いずれ『Antique door』を巣立って、事業拡大していくことも歓迎しています。」と言います。

このような拠点を、静岡県東部のエリアで広げていこうと、昨年から始めた裾野市での取り組みも、この3月で一つの形に漕ぎ着けます。裾野市岩波にある1軒の空き家を、地元の方から「街のために使えれば」と託されました。空き家見学会から始め、「ここをどう生かすか」ということを参加者が考えてプレゼンする機会なども設けました。題して「アキヤアソビ(仮)」。「かっこ仮」としたのは、このプロジェクト自体がまだ完成体はなく、あえて使い勝手の悪い手作りの状態から、プロジェクト参加者や入居者が自分たちでも考えながら取り組んでいくから、だそうです。いわゆる「関係人口」となる人たちが、受け身ではなく、自分事として関わってほしいという、山田さんの思いがこもっています。

「アキヤアソビ(仮)」プロジェクトには、建築を学ぶ学生や建築会社の人も加わってシェアスペース「すそのとwA、」を一緒に作り上げてきたそうで、この3月に完成予定です。すでに、コーヒー豆の焙煎所、不動産事務所、雑貨店の入居が決まっています。ちなみに、参加した学生の一人は、まちづくりに興味がある大学1年生。新型コロナの影響で、居場所を制限された窮屈な生活をしていた時に、このプロジェクトを知って、活動を共にすることにしたそうです。山田さんは、「移住定住を考えた時に、Iターンはハードルが高いと思っています。将来的に、学生にUターンしてもらえるよう、その場所を思い出してもらえる関わりを持てるようにしていけたら」とのことです。

今回取材にお邪魔した「Antique door」のほか、週末起業シェアオフィス「小商い研究室」(沼津市町方町)も運営しています。そして今回の裾野の「アキヤアソビ(仮)」プロジェクトで作った「すそのとwA、」。今後、静岡県東部でこのような拠点を増やしていく計画だそうです。空き家という地域課題を解決しながら、そこを拠点に創業支援、移住定住支援に結びつける山田さんの取り組み。今後立ち上がるプロジェクトに参加しながら、起業や移住の可能性を探ってみるのも良いかもしれません。

 

※本記事は3月10日に取材したものです。

(文・写真)静岡県関係人口ライター