事例紹介

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歴史を知って、歴史を作る一人になろう! 新居まちネット

交流・体験
歴史を知って、歴史を作る一人になろう! 新居まちネット
活動団体 特定非営利活動法人 新居まちネット

五月某日。
湖西市・新居町駅に降り立った私は、「小松楼まちづくり交流館」を目指しました。道中の道路標識には、「関所」の文字の下に英語で「Barrier(バリア)」と記されています。この街に来なければ、関所をバリアと表すことも知らなかったであろう私は、ここでの新しい出会いにワクワクしたのでした。

到着すると出迎えてくれたのは、「NPO法人新居まちネット」理事長の飯田のり子さん。まずは趣のある建物の歴史について教えてくださいました。

飯田さん「ここは浜松で新聞店を営んでいた松井米吉が明治34年頃に旅籠紀伊国屋の裏手にあった建物を買収して『芸妓置屋』として開業したものなんです。大正初期に現在の場所に移築され、改築し、二階部分はお座敷として遊べる置屋兼小料理屋として営業していました。戦時中は旅館として使われ、第二次世界大戦後に廃業したと聞いています。そして平成18年。しばらく空き家となっていたためボロボロだった小松楼をまちの活性化を目指す有志(新居関所周辺まちづくりの会のメンバー)で清掃や修繕を行い、自主的に一般公開を始めました。しばらくは小松楼を「残すか壊すか」という状態が続いていたのですが、旧新居町も動いてくれることになり、湖西市と合併する直前に町が土地を取得、建物を譲り受ける形で残ることが決まったんです。その後、平成22年に旧新居町と湖西市が合併し、合併前から段取りを付けていた大掛かりな耐震補強工事を行って、耐震補強工事が終わってから正式に「小松楼まちづくり交流館」としてオープンしました。そこで、小松楼の管理運営ができる団体組織となるよう、また継続してまちづくり活動ができるよう、まちづくりの会のメンバーが『NPO法人新居まちネット』を設立しました」。

館内を見学すると、ギャラリーとなっている一階では、地域の方の手作り作品や芸術作品が展示されていました。

飯田さん「今はコロナ禍なので休止することもありますが、ここでは、地域の高齢者を対象にしたミニデーサービスや、地域の歴史や文化について学ぶ講座を行ってきました」。

さすが、「街道」沿いの街なだけに、古き良き建物も見事に地域の「会堂」へと転換されていたのでした♪そして、さらに興味深いのが二階。ここでは、「べんがら壁」や当時の「ガラス障子」、「芸妓道具」「鏡台」などを見ることができます。

飯田さん「ここへ来るだけで、歴史が学べるんです。最近は、芸妓さんと遊女の区別がつかない人も多いのですが、ここで三味線や太鼓などの芸妓道具を見ることによって、その違いを知る人も少なくありません」

「芸妓(げいぎ)」とは、「技芸と教養を併せ持つ洗練された女性」のこと。ここには当時の芸妓さんたちの写真も数多く展示されていました。すると今度は、地元でセミプロの落語家としても活動する山口識行さんが教えてくれたのです。

山口さん「ここは本州の真ん中だから、文化の交流地点でもあるんですよ。言葉もそう。関東弁も関西弁も、違和感がないですね」

文化の交流地点?それならば……と、気になる「鰻の開き方」も聞いてみました。

山口さん「鰻は、背開きも腹開きもどちらもありますよ!饂飩や蕎麦の出汁も、関東風、関西風とあるんです」

さらに、観光面についてお尋ねしたところ……?

飯田さん「もともと観光向けのまちではないのですが、昨年はコロナ禍ということもあり、地域の魅力を体験してもらうイベント『浜名湖おんぱく』をオンラインで開催したところ、新しいご縁もいただけました。あらかじめ、新居の特産品やお菓子を参加者のご自宅へ送り、まち歩きをライブ配信で楽しんでもらいながら食べていただいたく等のイベントを行ったのですが、地域外の子育て中の女性が、『オンラインだからこそ子育て中でも参加することができた』と喜んでくださったり、オンラインイベントをきっかけに初めて新居町を知り、参加してくださったご家族が、その後、二週間にわたりまちへ遊びに来てくださいました」

嬉しそうに話してくださる飯田さん。そういえば、飯田さんは、どのようなきっかけで“まちづくり”に関わるようになられたのでしょうか……?

飯田さん「もともとは浜松の出身で、一度就職したのち東京の写真学校へ通い、卒業制作をきっかけに新潟県の佐渡島に住むことになったんです。その佐渡で自分たちの暮らす『ふるさと』を想いながら様々な形でまちに関わっている人たちに出会い、また、トキの野生復帰を応援するNPOに関わった経験から、夫の関係で越してきた新居で、自分も出来ることはないかとまちづくりに関わり始めたんです」

なんと、飯田さんご自身が「関係人口」のモデルのような方なのでした!今ではまちづくりを担う飯田さんは輝く瞳で続けます。

飯田さん「このまちに大勢人が来て欲しいというより、このまちを『第二の活動拠点』としてくれる人が増えて欲しいですね。まちにあるものを活かし、楽しみながら育てていく人材が内外から来て増えていったらいいなと。『まちの参加者』を募集しているようなものですね」

英語で「アライ(ally)」とは、「仲間」を意味する言葉。今回の取材では、新居町はまさに「アライ」を歓迎していることが分かりました♪

もしかすると、あなたの「新」しい「居」場所は、新居町かもしれません!そしてもし、あなたが新居のアライになった日には、必ずこう言ってくださいネ!

「新居町って、アラ、イ~わ♡」と!……おあとがよろしいようで☆

 

 

(文・写真)静岡県関係人口ライター