- 活動団体
- 湖西市新居・中根庭園を研究する会
- 活動場所
- 湖西市新居
静岡県湖西市新居町。東海道の宿場町として、また新居関所を有する歴史の町として知られるこの地域には、もう一つ、大切に受け継がれてきた文化があります。
それが、世界的造園家・中根金作が手がけた庭園や公園群です。
その価値を見つめ直し、地域の誇りとして未来へつなごうと活動しているのが「湖西市新居・中根庭園を研究する会」。
庭園という静かな文化を起点に、人と地域をゆるやかにつなぐ取り組みを紹介します。
中根金作と新居町 -世界に誇る庭園文化の源流

中根金作(1917–1995)は、磐田市出身の造園家で、島根県の足立美術館庭園をはじめ、全国各地、さらには海外にも多くの庭園作品を残した人物です。
日本庭園を「鑑賞するもの」から「空間として味わうもの」へと高めた存在として、世界的に評価されています。
実はこの中根金作が、湖西市新居のまちづくりに深く関わっていました。
新居関所周辺の景観整備をはじめ、公共施設や福祉施設、学校、寺院など、湖西市のさまざまな場所に中根金作の手がけた庭園や公園などが点在しています。
単発の庭づくりではなく、都市計画と一体となって関わっていた点は、全国的にも珍しい事例です。
しかし、こうした庭園は長い間、地域の「日常風景」として受け止められ、その価値が十分に語られる機会は多くありませんでした。
研究会の誕生 -埋もれていた価値に光を当てる

「この庭がどれほど貴重なものなのか、地域の人にも知って欲しかったのです。」
そう話すのは、中根庭園を研究する会・代表の吉元洋美さん。
ガーデンデザイナーとして外構設計やリフォームを手がける一方、京都の大学でランドスケープデザインを学び、大学院では中根金作と中根が手掛けた新居町について研究を行ってきました。
地元出身でありながら、中根金作の庭園や公園などが新居にこれほど残っていることを知ったのは、京都の大学でランドスケープデザインを学んでいる最中だったといいます。その驚きと気づきが、活動の原点となりました。
2018年頃から、中根金作をテーマにした勉強会やまち歩きを開催。100人を超える参加者が集まり、新聞にも大きく掲載されました。
こうした反響を受け、「この文化をきちんと守り、伝えていこう」という声が地域から上がり、「中根庭園を研究する会」が発足しました。
草引き会から出版まで -研究会の多彩な活動

研究会の活動の中心は、月に一度の草引き・砂紋引きです。
老人福祉センター内にある庭園で、毎月第三土曜日に実施され、誰でも参加可能。
会の活動メンバーは現在15人ほどで、月例活動には5〜6人が入れ替わりで参加し、LINEグループでゆるやかにつながっています。
また、観光協会と連携した中根庭園を巡るまち歩きも定期的に開催しています。
中根金作の庭園をたどることで、新居の歴史や浜名湖エリアの成り立ちを知る機会にもなっています。
新聞記事をきっかけに、市外から参加する人も少なくありません。観光と学びが自然と結びついたイベントとして回を重ねています。
さらに、書籍の出版や講演会の開催など、調査・発信の面からも活動を継続。庭園を「守る」だけでなく、「伝える」ことを大切にしています。

未来へつなぐ庭園 -次世代と関係人口の育み

中根庭園を研究する会のこうした取り組みは、庭園をきっかけに新居を訪れる人を増やし、関係人口の創出にもつながっています。地域の魅力に触れ、何度も足を運ぶ人が生まれ、歴史や食といった地域とのゆるやかな関係が育まれるきっかけになっています。
吉元さんは今後について、
「地形や地質、浜名湖全体に目を向けると、庭園の見え方も変わってきます。素晴らしい庭園がこの地にあることに関心を持ってもらえたら。その価値をしっかりと次の世代につないでいきたいです」
と語ります。
「中根庭園を研究する会」の活動は、湖西市新居ならではの庭園という文化を丁寧に守りながら、地域内・外とのつながりをしずかに紡いでいます。
取材・文/JUNK itamura

